CEOなのにクビ「ChatGPTの親」が仕掛けた猛反撃 持ち前の人心掌握術でクーデターを4日で制圧
後知恵になるが、既にこの時点でアルトマンの方が一枚上手という印象を受ける。「羊の皮を被った狼」さながら、口先では解雇を受け入れて恭順の意を示しつつ、アルトマンは間もなく(水面下で)自らの人脈を生かして猛反撃に出る。
そして僅か4日後には見事OpenAIのCEOに返り咲くと同時に、自分を排除しようとした取締役らを逆に排除してしまうのである。
本稿をお読みの方も、既にこれら解任劇(社内クーデター)の経緯はよくご存じかもしれない。が、そこにはアルトマンの人物像を知る上で興味深いエピソードも幾つか含まれている。
彼が解任された直後、OpenAI社長・取締役のグレッグ・ブロックマンもスツケヴァーからビデオ会議に呼び出されて取締役の解任を言い渡され、社長職は継続するよう勧められた。が、この取締役会の動きに抗議してブロックマンは即日OpenAIを辞職した。彼の後を追って数名の研究者も同社を辞めた。
アルトマン解任の理由について4人の取締役会は「我々との意思疎通において彼は常に率直ではなかった」などと曖昧な事を言うばかりで、具体的な理由は明らかにしなかった。
OpenAIの特殊性
この解任劇にはOpenAI独特の奇妙な統治体制も影響している。
元々、2015年に著名起業家のイーロン・マスクやアルトマンらを中心に非営利の研究団体として設立されたOpenAIは、当初「単なる一企業ではなく、人類全体に貢献する安全で高度なAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)の実現」を目標に掲げていた。
しかし、その後、ChatGPT等のベースにある大規模言語モデル(Large Language Model:LLM)の開発に必要とされる数億~数十億ドル(数百億~数千億円)もの資金を調達するため、2019年に事実上の営利企業(OpenAI LP)への転換を余儀なくされた。
ただ、その際も上部組織として当初の非営利団体(OpenAI Inc.)は維持し、企業経営の根幹に関わる重要な決定は非営利団体の取締役会に委ねられた。
念のため日本語では非営利団体の場合、「取締役会」よりもむしろ「理事会」と呼ぶべきだとの見解もあるが、OpenAIの実体は今や株式会社OpenAI LP(現在の社名はOpenAI Global,LLC)と見られるので、本稿ではそれを統治する組織として「取締役会」という呼称を採用する。因みに英語では「理事会」であろうと「取締役会」であろうと「board」という呼称で統一されている。
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