CEOなのにクビ「ChatGPTの親」が仕掛けた猛反撃 持ち前の人心掌握術でクーデターを4日で制圧

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電話でぶつぶつ文句を言うアルトマンに、トナーは「あれは単なる学術論文(だから、そんなに心配する必要はない)」と言い訳をした。

彼はトナーの釈明を一旦受け入れはしたが、直後に他の取締役達にメールを出して、その中で「この論文がもたらすダメージについて私達全員の認識は一致していない」と述べた。

それから間もなくアルトマンは複数の取締役らに電話して、「(もう一人の社外取締役である)ターシャ・マッコーリーがトナーを社外取締役から解任したがっている」と伝えた。

これを知らされた取締役らがマッコーリーに「トナーの解任を望んでいるというのは本当か?」と事実確認したところ、彼女は「真っ赤な噓よ(absolutely false)」と否定した。

取締役達は「アルトマンが私達を互いに対立させることによって取締役会を操ろうとしている」と感じた。

これと同じことは、スツケヴァーも以前から感じていた。

OpenAIに設立当初から加わり、そのチーフ・サイエンティストとして技術開発をリードしてきたスツケヴァーは自他共に認める天才研究者だ。

ところが2023年10月の人事異動で、アルトマンは(この時点で)同社最新の大規模言語モデル「GPT4」の開発に貢献した別の研究者(技術者)をスツケヴァーとほぼ同格の役職に抜擢した。

これをスツケヴァーは「自分への侮辱」と感じた。と同時に、「アルトマンが社内の研究者達を互いに対立させることによって操作しようとしている」と感じた。

スツケヴァーは他の取締役達に「このままでは自分は(OpenAIを)辞職するかもしれない」と述べた。彼らはこれを「自分を選ぶかアルトマンを選ぶか」の二者択一を迫っている発言と受け止めた(ただしスツケヴァーの弁護士は、これら一連の出来事があったことを否定している)。

苦痛に耐えきれなくなった取締役たち

アルトマンは周囲の関係者の心理を巧みに操作して自身を利するような活動を得意とする。彼はそのために人を欺くことすら厭わない――この悪い噂はアルトマンがOpenAIのCEOに就任する遥か以前、彼が最初に立ち上げたスタートアップ企業「ループト」のCEOを務めていた時代からシリコンバレーでささやかれていた。

次ページたまりたまった苦痛が社内クーデーターに結びついた
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