ソニー「ピクセル」は中国を配慮して作られた

中国を揶揄するようなストーリーを削除

興行収益の25%を外国の映画スタジオに与える収益分配方式で、毎年合計34本の映画が中国に入ることを許可されている。そのうち14本の映画は3DやIMAXといった「ハイテク」フォーマットでなければならない。

中国の検閲プロセスは予想不可能なことがあると、ソニーメールは提示している。2014年初め、スタジオは中国の観客向けに、半身半機の警察官の話である「ロボコップ」の、キーとなると同時に不快にもさせるシーンを取り除くようにとの要請に直面した。

「ロボコップに関する検閲は、非常に悩ましいです。ロボコップがスーツを開いて、人間として残された部分を見せるという一番素晴らしく不可欠なシーンを切り取ろとしているのです。」と、国際幹部のスティーブン・オーデルが書いた2014年1月28日のメールに見て取れる。「シーンをほんの少し削るだけで切り抜けられればいいのですが。この件については、いずれにせよ抵抗できるとは思えません。危険にさらすには多すぎる金額です。シーンをカットしなくていいように祈りましょう」。

習総書記の支配下にある政治情勢も、何らかの役割を担っているのかもしれない、と一通のメールは示唆する。「柔軟性拡大について言えば、私には確信がありません」と、ソニー中国の幹部リ・チョウは、2014年初めに北京が外国映画の分配について増大を検討しているというメディア報告にコメントする際書いている。「現政府はあらゆる面においてさらに保守的なようで、これはロボコップの度重なるカットにも反映されています。近頃検閲委員会は不明瞭で、おびえていて、過剰に慎重に見えます」。

「ピクセル」について交わされたメッセージでは、ソニー幹部が中国当局の過敏性の測定方法について取り組んでいる。

2013年11月1日のメールでリ・チョウは、万里の長城に大きな穴を開ける一撃を加えるシーンを含む脚本に、いくつかの箇所で変更するよう提案をした。「これが世界規模の破壊の一部として見えるなら大丈夫でしょう。世界の他の場所にある、見てそれとわかる史跡も破壊されることが示されればいいということになるでしょうから」と彼女は記した。

また彼女は、未知の技術を使った攻撃の裏に中国がいるのではないかと、アメリカ大統領と大使、CIA長官が推測するシーンを変更するようアドバイスもした。最終バージョンで観客が見るのは、役人たちがロシア、イラン、グーグルの責任かもしれないと推測するシーンである。

「中国は他の超大国と一緒に言及されることはあるが、ロシアと中国にはそんな技術はないというのは好ましくないでしょう」とリはメールに書いている。また最近起こった政府のサーバーへの中国のハッキング事件のニュースを考慮して、中国は共産主義陰謀同士がメールサーバーをハッキングした…という部分に異議を唱えるかもしれません」。

「慣例によるルール」

2013年12月中旬、リは万里の長城のシーンを完全に排除するよう提案し、そのシーンは「不必要」であるとした。

同時期にメールでソニー幹部は、ビデオゲームのキャラクター、パックマンが関係するカーチェイスシーンを東京から上海に移し、それが中国での公開日の役に立つかどうかを議論していた。

リ・チョウはその変更は行わないよう忠告した。「パックマンのアクションシーンを東京から上海に移すことに関して言えば、それは良いアイディアではありません。それで町全体が破壊され、神経の逆なでになるかもしれません」と2013年12月18日のメールで彼女は書いている。「言い換えればそれが問題になるかどうか明言するのは難しいです。慣例によるルールでは、実際に建物や通りを破壊する意思がなくて、それが単なる巻き添え被害であれば容認できる、となっているからです。でもそれならどこで線を引くのですか」。

最終的に劇中の中国に関する言及は全て取り除かれた。この決定は、2014年初めに下されたようである。「ダグはリのアドバイスを聞き入れて、中国に言及した部分全てをピクセルから取り除くことにしたようです(万里の長城を大道具の一つとして使うことも含む)」と、国際幹部オーデルは、当時のコロンビア映画社長ダグ・ベルグラッドを引き合いに出して書いている。

中国で映画配給の承認を勝ち得ないことによって生じる代償は、ソニーのメールの中でも明白である。

2014年2月、ソニーのマーケティング責任者はあるメールを配布している。「キャプテン・フィリップスは中国で劇場公開されないことを了承ください」というものだ。 これはトム・ハンクスが、ソマリ族の海賊に人質として捕らえられるキャプテン、リチャード・フィリップス役で主演している映画に言及している。

「キャプテン・フィリップス」の予算に関する議論もメールに含まれており、ソニー幹部が本作で世界的に1億2000万ドルの収益を見込んでいたが、中国での審査を受ける承認が下りなかった時点で変更となったことがわかる。「我々は900万ドル不足で、中国には受け入れられません。」と電話会議のメモはメールされている。「目標達成のためには、最後の1ドルまで取りに行かなければなりません。この映画でいかにして収益を増やすかを考えるのは、我々全員の責務です」。

2013年12月のメールでは、ソニー・ピクチャーズ国際配給部代表ロリー・ブルアーは「キャプテン・フィリップス」が中国の検閲で承認されそうにないことを推測していた。劇中でアメリカ軍が船長を救助する。この筋の内容が中国高官を落ち着かない気分にさせるかもしれないとブルアーは記していた。

「現状で言えば、中国はおそらくこの映画を検閲に通過させないでしょう」とブルアーは書いている。「理由はアメリカの巨大な軍事機構が一人のアメリカ市民を救うことです。中国は決して同じことはしないでしょうし、この考えを推奨する意思も全くないでしょう。映画の政治色にも彼らは快く思わないでしょう」、

北京は「ピクセル」に対しては好感触を示しているようだ。今週(7月19日の週)、ソニーにはいくつかの良い知らせがあった。「ピクセル」が中国公開を承認された。同国での公開は9月15日である。

執筆:クレア・ボールドウィン、クリスティーナ・クーク
追記:ビオラ・ジョー(香港)、メガ・ラジャゴパラン(北京)、ピヤ・シンハ-ロイ(ロサンゼルス)
編集: ピーター・ヒルシュベルク

 

政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナ後を生き抜く
  • ブックス・レビュー
  • 自衛隊員も学ぶ!メンタルチューニング
  • あの日のジョブズは
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
菅新政権大研究<br>行方を占う5つのポイント

歴代最長の7年8カ月に及んだ安倍政権から何が変わるのか。「自助」好き、「経産省内閣」の継承の有無、解散総選挙など5つの観点で読み解きます。エコノミスト17人へ緊急アンケートを実施、経済見通しと課題も浮き彫りに。

東洋経済education×ICT