ソニー「ピクセル」は中国を配慮して作られた 中国を揶揄するようなストーリーを削除
「ピクセル」のケースでは、エイリアンが人気ビデオゲームのキャラクターの姿で地球を攻撃してくるが、ソニーのメールでは単一バージョン、中国に適したバージョンのみ作ることを提示している。ソニーの考えの裏にある論理は、ソニー・ピクチャーズ社長のスティーブン・オーデルが、ロボコップについての2013年9月12日のメールで説明している。
「中国に関する要素を別の国のものに変えるのは、比較的簡単な修正でしょう」とオーデルは書いている。「映画をそのままにすることは不都合でしかありません。アドバイスとしては、あたかも中国バージョンを変更するだけであるかのように、全てのバージョンを変更してしまうことです。ブロガーたちがバージョン比較をし、市場をなだめるためだけに中国設定を変更したと気づくときに、マスコミにそのことで問われることに備えて準備をしておくのです」。
アメリカ映画産業が中国を獲得しようとする試みは、習近平総書記の元で統治している共産党が、20年以上にわたって市民社会の大規模な取り締りを行っていることに従っていることになる。中国では、20人以上の人権支持弁護士が今月検挙され、2012年習総書記が権力を握って以来、何百人もの反体制派の人たちが身柄を拘束されてきた。
中国が気に入るような映画を制作せよ
中国が隆盛するに従い、国内の市民の自由を抑える取り組みは、国外へも広がっている。そうした中で、北京に対して侮蔑的と思われる「ピクセル」のシーンカットは、世界の聴衆が事実上いかに中国による基準設定に従っているかということを示している。同政府はハリウッドの繁栄を許してきたような種類の自由を拒絶しており、それにハリウッドが従っているのだ。
「私は映画スタジオが抜け目なくなってきていると思います」と、オーブメディアグループの設立者でCEOのピーター・シャオは言う。同社はハリウッドと中国の共同製作に力を入れている独立系の映画製作会社である。「あるタイプの映画、特に世界的大ヒット作品に関して言えば、彼らは中国が社会的または政治的な理由で拒絶するようなものは敢えて作りません。そのことは既に自明の理なのです」。
ソニーのメールは、北朝鮮指導者金正恩の暗殺を描いたコメディ映画「ザ・インタビュー」の公開前にハッキングされた。ソニーが映画館への脅迫に対応する形で映画の公開を中止した際、アメリカのバラク・オバマ大統領は自己検閲について警告した。最終的にソニーは映画を公開した。
「もし誰かが風刺的な映画の公開をできないように脅迫できたとしたら、嫌いなドキュメンタリーや嫌いなニュース報道を見て彼らが何をしだすか、想像してみてください」とホワイトハウスでの年末記者会見で尾花大統領は語った。「もしくは更に悪いことに、製作者、配給者やその他の関係者が、おそらくは攻撃される必要のある過敏性を持つ誰かを攻撃したくないという理由で自己検閲を始めたら、どうでしょう。そんなのは私たちではありません。それはアメリカという国ではありません」。