「平気でウナギを食べる人」が知らない資源の実態 ウナギをいつまでも食べ続けるためには

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必ずしもウナギだけではありませんが、魚が減った原因としてよく出てくるのが「海水温上昇」です。もちろん海水温は資源量に大きな影響を与えます。しかしながら、それが乱獲放置の免罪符のようになってしまうと、科学的根拠による資源管理の本質がどんどんずれてしまいます。

ニホンウナギの生息海域の北限は青森県とされてきたのに、北海道にウナギがいた。こういった記事を見るとウナギが実は海水温上昇で北上し、北海道にたくさんいるのではないか?と想像してしまう方がいるかもしれません。しかしながら、残念ながらそういうことにはなりません。

記事にもありますが、北海道では過去に、成長したウナギが獲れたという記録がわずかにあるそうです。珍しいところに珍しい魚が見つかると、あたかもそこに魚がたくさんいるのでは、といった「想像と錯覚」が起きやすくなります。

確かに、ある程度のウナギが生息しているかもしれません。しかしながらその数量は、漁業を形成するような数量にはなりません。また仮に漁ができたとしても、数年で獲り尽くされてしまう数量にすぎないのです。なおせっかく増えても、トレーサビリティがしっかりしていません。密漁を含め、資源を獲り尽くしてしまう制度は、変えねばならないことを付記しておきます。

ウナギ資源を回復させるには?

このままでは、ウナギの資源が回復することはありません。国産だけでなく、他国の資源も食べ尽くしてしまいます。必要なのは科学的根拠に基づく数量管理を行うこと。そして厳格なトレーサビリティで、違法なウナギの価値をなくして流通させないことです。

全量とはいかないでしょうが、かば焼き製品なども含め、DNA検査を行って罰則を強化することも必要です。そうすれば輸入されるはずがない、ヨーロッパウナギなど違法ウナギの輸入をある程度防げます。

そして社会が、ウナギがなぜ消えていくのか? 魚がなぜ消えていくのか? その本当の理由を理解することです。

片野 歩 Fisk Japan CEO

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かたの・あゆむ / Ayumu Katano

早稲田大学卒。Youtube「おさかな研究所」発信。2022年東洋経済オンラインでニューウェーブ賞受賞。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。長年北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国であるノルウェーには、20年以上毎年訪問を続けてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会)、『日本の漁業が崩壊する本当の理由』他。

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