「FT買収競争」に敗れた会社の次の一手とは? 独アクセル・シュプリンガーの戦略を読む

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8月1日以降、グーグルニュースに自社サイトのニュースを拾われたくない新聞社は「オプトアウト」(抜け出る)を選択することになっていた。しかし、蓋を開けてみると、ほとんどの新聞社が「オプトイン」(選択する)を選んでいた。

2014年4月には、「グーグルは恐ろしい」発言で話題をさらった。フランクフルター・アルゲマイネ・ツアイトングの取材の中で、検索エンジンとして独占的な位置にあるグーグルは「社会にとって危険」と述べ、物議をかもした。政治的には正しくない言葉だったかもしれないが、「よくぞ言ってくれた」と喝采を送ったドイツの新聞関係者も多かったようだ。

若者への投資も

企業全体としてデジタル化を進めるなら、将来への投資も必要——。そんな発想から、デップナー氏が音頭をとって始めたのが、若者たちによるテクノロジー・スタートアップへの投資プログラム。「プラグ&プレイ・アクセレレーター」と呼ばれている。

毎年、複数のスタートアップに投資している。米シリコンバレーにもオフィスを置き、次のテクノロジーや新しいアイデアの発掘に余念がない。

そんなデップナー氏は、なぜFT取得を目指したのだろうか。

企業全体としてデジタル化を目指し、着々と実績をあげていること、米ネット企業の躍進をやや不快に見つめながらも、シリコンバレーで人材やテクノロジー投資に余念がない経営姿勢からは、その理由が浮かび上がってくる。

つまり、デジタル界の隆盛を見れば、英語圏のメディアが支配的位置を持つのは明らか、ということだ。国際的な事業展開を行っているアクセル・シュプリンガーといえども、パズルの最後の一片が「英語圏で通用するメディア」だったに違いない。もしFTを手に入れることができれば、世界でもトップ級のデジタルメディアグループになると考えたわけだ。

今回の一件で、アクセル・シュプリンガー社が英語圏でのブランドメディア獲得を諦めるとは思えない。今後も、なんらかの形で努力を続けるはずだ。次のターゲットはどこか。例えば、日経の買収案件には含まれなかった、英ニュース週刊誌「エコノミスト」はどうだろうか。まだまだバトルは終わっていない。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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