しかし、いつでもこうした形で因果関係を突き止められるとは限らない。特に、全員を対象とした政策は、対象外となる者がいないため、対象者と対象外の者との間の違いが区別できず、当該政策が原因なのか他の要因が原因なのかが判別できない。
今後策定予定の「EBPMアクションプラン」では、前述のように、収集データや検証方法も視野に入れており、さらなるEBPMの強化が期待される。
こうした取り組みは、なぜ今唱えられているのか。官僚の無謬性があって元来不得手であるEBPMを、ここまで強力に推すからにはワケがあろう。
そのワケは、予算において無理筋な政治的要求を断るための効果的な手段だからだとにらむ。
エビデンスを示せるのは政治家より官僚
コロナ禍では、与党側から過剰な予算要求が横行した。官僚側もそれに悪乗りした面もあるが、無理筋な予算要求を効果的に止める手段がなかった。
しかし、EBPMでは、提案する政策にエビデンスがないなら却下される。EBPMでは、エビデンスを解明する分析を必要とするが、今のところわが国の政党にはそうした機能があまりなく、むしろ中央省庁にその機能がある。
最後の関門は、EBPMについての首相官邸の理解であろう。
官僚がEBPMに則して政策に効果がないと否定しても、「自らの政策に反対するのであれば異動してもらう」などとして聞き入れなかったり、政策の実施を事務方に事前の相談もなく突如決めたりするような首相官邸の姿勢である限り、誰が総理大臣になっても、わが国にEBPMは定着しない。
EBPMによって、国民のためになる政策が選りすぐられてゆくことが、今求められる。
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