特に気になるのが日本人の陥りがちな教条主義である。一度決まったもの、前例のあるものについては「こういうものだから」とガチガチに固まった思考をしてしまう。交渉において、柔軟さや臨機応変というものがないのだ。
決められたことを決められた範囲でのみ処理していくのは、言っては悪いが、役人根性である。自分の役回りと権限を守ることのみに固執して、そもそもの交渉事のダイナミクスが抜け落ちている。
そこを打破し、ベトナムのように大国とも伍することができるようになるために、今の日本に必要なのは「異質と組む勇気」ではないだろうか。
1対1で中国と喧嘩するのは不毛
ベトナム流の中国や世界との付き合い方、戦い方は一国主義ではない。「ベトナム対どこかの国」ではなく、ASEANで一緒に戦える相手と組んで中国にも出向いていくというものだ。
日本と中国の関係においても同じである。二国間だけで不毛な議論のすれ違いをするより、「ASEANの第三国を交えて、新しい価値観を入れた上で中国と向き合えばいい」とベトナムは教えてくれている。
1対1で日本と中国が喧嘩している限り、漁夫の利で他国が利益を得ることがあっても、当事者間では無益だ。それよりも、日本が先に異質のベトナムと手を組んでおく。日本が前面に出るのではなく、ベトナムの強みを利用して日本は後ろ側で利益を得るような仕組みをつくるという発想をすればいい。
日本人のやり方は違うのだという教条主義、孤立した内向き思考では、今後ますますベトナムとの差が開いていきかねないのである。
前出のように、「日本人が交渉事で負けない方法」については、『中国との付き合い方はベトナムに学べ』(SB新書、7月16日発売)でも詳しく触れている。同書は久米宏氏にもご推薦を賜っている。あわせてご一読いただければ幸いである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら