羽田空港の京急線ホームに掲げられた出発案内板には、千葉県内の京成線の駅名と神奈川県内にある京急線の駅名が交互に並んでいる。都心に住んでいる人でも一目ではわかりにくく、あの情報から「日本橋まではこの電車が早い」とか「横浜には◯◯分発の特急が先に着く」といったことを割り出すには、かなりのスキルが要求される。
もっとも最近では、スマートフォンの乗換案内などを誰もがチェックしているので、案内板の表示は以前ほど重要視されていないのかもしれないが。
「快特はどこどこに止まり、その次に来るのは急行で」といった案内は電鉄会社にとって利用客に伝えるべき重要なファクターだろうけど、空港に降り立った訪日客には「どの電車がトーキョー方面に行くか」が最も知りたいインフォメーションだ。品川から各停になろうが、泉岳寺で乗り換えがあろうがなかろうが、都心に行けるかどうかを確実に知りたい。多少余分に時間が掛かっても、目的地に行けることが重要なのだ。そのあたりの案内の「度合い」が不十分と感じたセバスチャンさんは、京急線への乗車をあきらめたという。
ドゴール空港駅が行っていること
そういう点で「列車のスピードが遅かろうが早かろうがとにかく都心に行く」という表示をキッパリと行っているのは、パリのドゴール空港駅だ。
ホームへの入り口には、エッフェル塔のマーク付きで「PARIS」とだけ表示。ちなみにパリには「パリ駅」は存在しない。パリは東京と同じようにあちこちに繁華街が分散しているため、空港からの電車1本で目的地にたどり着ける人はそんなにいないはずだが、それでも「街へはこちら」と言い切ってしまっている。しかも、同じホームから停車駅数も行き先も違う列車が交互に出発するが、とりあえず全列車がパリの都心までは必ず行くから、こういう「わかりやすい」表示をしているのだろう。
こんなような表示を行っているケースは、ロンドン・ヒースロー空港の地下鉄駅でも見られる。本来、電車の行き先を出すべき電光掲示板に「セントラルロンドン」と掲示、これに乗れば街中に行けることをストレートに伝えている。
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