ゼネコン技術者「現場女子」が4人に1人の就活実態 「建築デザイナー人気」を背景にこの10年で倍増

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1929年創立で理工系大学として実績のある東京都市大学も、現場女子を目指す女子学生が多い。

建設系の学部としては理工学部、建築都市デザイン学部、情報工学部がある。このうち建築都市デザイン学部の建築学科は女子学生の比率が高い。建設系の学部全体では女子学生の比率は20%台なのに対し、建築学科については女子学生が33%を占めている。

「プロジェクトの施工管理においては、データを含めた分析が重要になる。そういうリテラシーを持っている人にとっては、非定型的状況を創意工夫して分析することは面白いだろう。こうしたマネジメント能力に男女の差異はない」と、野城智也学長は語る。

最近は工事現場がきれいになるなど労働環境面がよくなっていることもあり、「『現場管理をやりたい』という女子生徒も増えている」(野城学長)そうだ。

官民あげてのプロモーションも奏功

現場女子を目指す女子学生が増えている背景には、政府やゼネコン側の施策もある。

慢性的な人手不足に悩む大手ゼネコンなどの企業は、「女性活躍」や「グローバル展開」を強調することで、若い働き手の確保を急ぐ。最近は、子育て支援制度や女性技術者育成プログラムを充実して、女性技術者の働きやすい環境を整備していることを訴求するゼネコンもある。

官民をあげてのプロモーション戦略も効果を発現しているようだ。

2016年に国土交通省がタレントのおかずクラブを起用して、建設業の魅力を発信するキャンペーンを全国各地で展開した。2018年からは中堅ゼネコンの奥村組が、人気俳優の森川葵さんが登場するテレビCM「建設LOVE!奥村くみ」シリーズを放映。奥村組に触発され、西松建設や熊谷組といった準大手ゼネコンも次々とテレビCMを投入した。

「こういった官民が打ち出したプロモーション戦略がじわじわ効いてきて、女性の就職者が増えてきているのではないか」と、ヒューマンリソシアの人材紹介事業部・髙橋良久事業部長は分析する。

しかし、懸念はある。建設技術者としての就職者数が10年スパンで増えているとはいえ、男女ともに2023年は前年割れした。「航空やレジャー業界などが、コロナ禍を経て採用を再び活発化し始めた。建設業は、そういった業界との学生獲得競争に巻き込まれている可能性がある」(髙橋氏)。

建設業は従事者の高齢化が進行する一方で、若い就労者の流動性が高まっている。若者が他産業へ流失してしまわないように、働き方改革やデジタル化促進を業界全体で取り組んでいく必要がある。足元で現場女子が増えていることに胸をなで下ろして、立ち止まっている時間的余裕はない。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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