高円寺にだけ存在する「なんか自由な感じ」の正体 若者だけでなく中年にも居場所がある安心感

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そういえば、何か良いものが失われていこうとするとき、若い頃は「とんでもない、これはずっと残っていくべきだ」と思っていたけれど、40代になってからは「失われるのは時間の問題だけど、要は自分が死ぬまで逃げ切れるかどうかだな」という視点が出てきた。そして大体いつも、自分が死ぬまでならなんとかギリギリ逃げ切れるんじゃないか、と思っていることに気づく。

まあ、なくなったらなくなったで、そのときは寂しいけど、すぐに慣れて、忘れてしまって、最初からそうだったような気がするんだろう、大体のものは。

過去のこともすぐ忘れてしまって、未来のこともあまり実感が湧かない。今の気分だけをいつも重視してしまう。それは自分のいいところでもあり悪いところでもあると思う。

みんな「わけのわからない生活」をしていてほしかった

みんな人生をどうやって生きていってるのか、いつまで経ってもうまく想像できない。

パーティーが終わって、中年が始まる
『パーティーが終わって、中年が始まる』(幻冬舎)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

SNSで、普通の人間ぽくない変なハンドルネームで(たとえば「暴れ大納言」みたいな)、生活感のない変なことをいつもつぶやいている人たちが、ときどき何かの拍子に普段は普通の社会人として働いているのを匂わせるようなことをつぶやいたとき、少し裏切られたような気持ちになる。

自分は「pha」という人間かどうかもよくわからない名前で、何をやっているのかよくわからない生活を続けているのだから、みんなももっとわけのわからない生活をしていてほしかった。自分以外のみんなはちゃんと人生というものを理解してしっかりと生きているのに、自分だけがいつまでも地に足の着かない生活をしている気がしてしまう。

でも、そういう生き方しかできないのだ。先のビジョンは全くないけど目の前のことをひとつずつかろうじてこなしていく、ただひたすらそれを繰り返していって、破綻が来る前に逃げ切りたい。もし破綻してしまったら、そのことを文章にしていろんな人に笑ってもらおうという心の準備だけはいつもしている。

pha 文筆家

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ふぁ

1978年生まれ。大阪府出身。京都大学卒業後、就職したものの働きたくなくて社内ニートになる。2007年に退職して上京。定職に就かず「ニート」を名乗りつつ、ネットの仲間を集めてシェアハウスを作る。2019年にシェアハウスを解散して、一人暮らしに。著書は『持たない幸福論』『がんばらない練習』『どこでもいいからどこかへ行きたい』(いずれも幻冬舎)など多数。現在は、文筆活動を行いながら、東京・高円寺の書店、蟹ブックスでスタッフとして勤務している。

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