日本支援「ホーチミンメトロ」いまだ開業しない謎 「中国も手を出したがらない」ベトナムの事情

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ホーチミンメトロ1号線は、ベトナム最大の経済都市であるホーチミン市の中心部ベンタインから北東部のスオイティエンバスターミナルを結ぶ約19.7kmの路線である。市内中心部のベンタイン―オペラハウス―バソン間の3駅のみが地下区間(約2.5km)で、それ以外は主に国道に沿った高架区間(約17.2km)となる。都心の要所を結ぶというよりも、都心と郊外を結ぶ性格が強い路線だ。

始発駅のベンタイン駅は、庶民の台所とも言えるベンタイン市場が目の前に立地するのみならず、高級ブランド店から日系デパートやホテルなどが連なる商業の中心エリアである。より人口密度の高い北西部へ延びる2号線(ドイツが中心となり事業実施中、2032年開業予定、当初は2016年開業予定)のほか、将来的には3A号線、4号線も乗り入れる一大ジャンクションとなる予定で、地上にも十分な用地が確保されている。

ベンタイン駅地上
ベンタイン駅の地上部分。左奥の時計のある建物がベンタイン市場(筆者撮影)

都心区間を抜けると高架になり、サイゴン川を越えるとホーチミン市直轄のトーゥドゥック市に入る。新興開発地区で、沿線には真新しい高層アパートが立ち並ぶ。しかし、それもすぐにまばらになり、荒涼とした工業エリアへと風景は一変する。終点のスオイティエンバスターミナルはその名の通りバスターミナルが隣接しているほか、人家もまばらな駅の先に車両基地が置かれている。

ホーチミン1号線 郊外区間高架
ホーチミンメトロ1号線の郊外区間は、主に道路の緩衝地帯に建設されている。高架橋はフランス式のUシェイプを採用(筆者撮影)
ホーチミン1号線 終点付近
終点スオイティエンが近づくと、建物もまばらになってくる(筆者撮影)

1号線は需要よりも土地収用の容易さから優先的に整備されたと見え、人口2000万人を超えるホーチミン都市圏にあって車両が短い3両編成であることも納得できる。高架区間のほとんどは国道の緩衝地帯に建設されている。民有地にかかる一部駅の出入り口のみが未着工だったり、工事が続いたりしているが、これはジャカルタのMRTでも見られた光景である。

車両はすべて搬入済み

事業総額は約43兆7000億ドン(約2727億円)で、そのうち約8割がJICAによる円借款供与で賄われる。2007年に「ホーチミン市都市鉄道建設事業(1号線)(I)」として208億8700万円、2012年に同(II)として443億200万円、2016年に同(III)として901億7500万円が供与され、2014年に着工している。

土木工事はパッケージごとに三井住友建設と現地建設企業、清水建設と前田建設、住友商事と現地建設企業のコンソーシアムが受注している。

ホーチミン1号線 建設業者 看板
高架区間と車両基地建設パッケージであるCP2は住友商事と現地建設企業(シエンコ6)の共同事業体が受注している(筆者撮影)
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