“円”国際化で日本は復活する! 櫻川昌哉著 ~利子所得を増やし円高メリットの享受を

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
“円”国際化で日本は復活する! 櫻川昌哉著 ~利子所得を増やし円高メリットの享受を

評者 河野龍太郎 BNPパリバ証券チーフエコノミスト

変動相場制への移行後、日本は数年に一度訪れる円高によって輸出部門を中心にダメージを被っている。円高の最大の理由は日本が大きな経常黒字を抱えることにある。それにしても黒字国がデフレ圧力を受けて調整が進むというのは本当におかしな話だ。金本位制なら経常赤字国が景気悪化によって輸入抑制を図る。基軸通貨国の米国が経常赤字であるため、円高によって黒字国の日本がデフレ圧力を受ける形で対外収支の調整が図られているのである。

米国経済はバランスシート問題を抱え内需が脆弱であるため、今後もドル安が進みやすい状況である。日本は円高とそれがもたらすデフレ圧力を回避するため、一段の金融緩和を続けなければならないのか。

本書は円を国際化していれば、過去20年、日本経済がこれほど苦しまなくて済んだと主張する。金融面、貿易面で円の国際化が進めば、輸出部門は円決済で円高によるデフレ圧力を回避できた。新興国などの海外企業が利回りの高い円建て社債を発行し、日本の投資家は為替差損を被ることなく、高い投資機会を享受することもできた。

プラザ合意の段階で、日本はドル基軸通貨体制に見切りをつけ、円の国際化を積極的に進めるべきだった。経常黒字の裏付けを持つ円建て資産は、グローバル投資家のニーズにも合致するはずである。円の国際化がさらなる円高につながることを恐れ、日本政府は極めて消極的で、円の地位は低いままである。

本書の考え方に、評者も概ね同意する。労働人口が減少し、賃金水準の高い日本が製造業だけに頼っていくことは不可能である。円の国際化で利子所得を増やす努力が必要だ。円高メリットを享受できる社会を目指さなければ、われわれはいつまでも豊かにはなれない。

さくらがわ・まさや
慶応義塾大学経済学部教授。1959年福井県生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業。大阪大学経済学部助手、イェール大学客員研究員、名古屋市立大学大学院経済学研究科教授を経て、2003年より現職。

朝日新聞出版 1680円 270ページ

  

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事