新型コロナ禍の巣ごもりの時期にSNSや動画配信サービスなどを介して多くの人に存在が知られ、それと同時に、獣医病理医であるぼくのところに、その遺体が持ち込まれることも増えました。
「可愛がっていたのに、なぜ死んでしまったのかわからない。原因を知りたい」と悩む飼い主が大勢いらっしゃるのですね。いわゆる「爬虫類女子」というのでしょうか、深い愛情を注いでいたという女性から特に多く依頼をいただきます。
ヒョウモントカゲモドキの死因で多いのは、温度や湿度が適切でないことや、うまく水を飲めないことなどによる脱水で起きた腎不全や痛風、それと、ケージに敷いた土などの異物を飲み込むことで起こる腸閉塞です。
痛風では、遺体を病理解剖すると腎臓が腫れて大きくなっていたり、内臓の表面に白い尿酸塩の結晶を見たり、関節が腫れていたりするのを見て取ることができます。腸閉塞は、異物で腸がパンパンに膨らんでいたり、壊死(えし)を起こして赤くなった腸内に、異物が詰まったりしている様子が観察できます。
ペットとしての歴史が浅いヒョウモントカゲモドキは、人間との付き合いが長いイヌやネコほど最適な飼育方法や、病気の理解が進んでいません。寿命をまっとうせずに亡くなる場合、たいていは飼育環境に原因があります。
病理診断の結果を告げて、飼い主さんに「えっ?砂漠に生息しているから暑さには強いんじゃないのですか!?」とか、「床材は土ならなんでもいいと思っていました」とかと、驚かれることもしばしばです。
どんな生き物なのか?
ヒョウモントカゲモドキは、中央アジアの乾燥地域を原産地とする爬虫類です。成体の大きさは20~25センチメートル。オレンジ、白、黄色、黒などの体色の上に、さまざまなパターンの斑紋が載っており、この多様なカラーバリエーションが人気の要因の1つです。
英語名はレオパードゲッコーといいます。レオパードはヒョウ柄、ゲッコーはヤモリという意味です。この英名にちなんで、愛好家からはしばしば「レオパ」と呼ばれています。
ヤモリの仲間の多くはまぶたを持ちませんが、ヒョウモントカゲモドキにはまぶたがあります。パチクリと瞬きをすることから「表情」が豊かなので、これも人気に一役買っています。
尻尾に栄養をためることができ、栄養状態がよい個体はプリプリとしたかわいらしい尻尾になります。