サンリオ「2代目社長」で上場来高値に達した必然 構造改革で復活、「時価総額1兆円」も射程圏?
第2は、「聖域」とされていた国内物販事業に切り込んだこと。同事業は祖父である信太郎名誉会長の思い入れが強かった一方、「昨対売上主義で商品を作りすぎていた」(朋邦社長)ために過剰な在庫を抱え、恒常的な赤字が続いていた。
そこで、アイテム数の削減や不採算店舗の閉鎖などで利益重視の戦略に転換。2024年3月期には61億円の営業黒字を生み出した。
そして3つ目のポイントは、長年の課題だった“ハローキティ一本足打法”からの脱却を前進させたことだ。
好業績を維持していた2014年3月期には、海外売上高のうちハローキティの割合が9割超を占め、会社全体が欧米でのハローキティブームに依存する体質となっていた。
実際、2010年頃にはレディー・ガガら海外セレブがキティグッズを愛用するなどして一大ブームが起き、欧米でライセンス商品のロイヤリティ収入が大きく伸びた。ところがその後、他社のキャラクターがヒットすると、ウォルマートなど現地の大手小売店の陳列棚が一気に取られ、業績も下降に転じた。
仕込んだものが想定以上の成果に
こうした反省も踏まえ、朋邦社長の下では、シナモロール、マイメロディ、クロミといった他のキャラクターのブランド力を重点的に強化。1つのデザインに複数のキャラクターを使ったり、1つの商品をキャラクターごとに展開したりする「複数キャラクター展開」にも取り組んだ。結果的に、2024年3月期の海外売上高の構成比は、ハローキティが5割、複数キャラが19%、その他のキャラクターが31%と大きく変化した。
一連の施策の効果もあり、利益率の高いライセンスビジネスによるロイヤリティ収入は2021年3月期に157億円だったのが、2024年3月期には398億円にまで成長した。
朋邦社長は3年間での改革について、「(コロナ後の需要回復など)外部要因の追い風もあり、仕込んできたものが想定以上の成果を出した。それによって改革に対する従業員の信頼度が大きく上がり、また次の改革につながるといういいサイクルができた」と振り返る。
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