「はじめてのおつかい」"虐待"批判が吹き飛ぶ凄み 令和になっても"国民的番組"であり続ける背景
一方、それを見守る親にとっても、子どもを1人で送り出すのは「はじめて」であり、「子育てにおける最大のチャレンジ」と言っていいでしょう。実際、番組では子どもを送り出したあとに心配でそわそわし、帰ってきたら涙をこぼして抱きしめる親の姿がはっきりと映されています。
また、そんな不安や安堵がにじむ親の姿を見て感動し、自分の子どもと重ね合わせる視聴者が少なくありません。もともと同番組には「子どもの成長や自立を見守る」「親子や育児のあり方を考える」という社会的な大義名分もあるため、視聴者とスポンサーの評判が極めていいという状態が続いています。
支持を得ている背景として見逃せないのは、制作サイドの配慮と努力。シンプルな内容だからこそ構成・演出でのごまかしが利かず、さまざまな配慮と努力を重ねることで番組が成立しているのです。
最初の配慮と努力は、「一定のあやうさを感じさせながらもおつかいが成立しそうな子どもを見つける」こと。あまり「やりたくない」という子どもにやらせてはいけないし、それは多くの子に会ってみないとわからないでしょう。親は「ウチの子をぜひ」とやらせたがるだけにスタッフサイドの見極めが求められますし、だから同番組は出演家族を大々的に募集していません。
次の配慮と努力は、「大人がメインの番組以上に安全面で最大限の注意を徹底しなければいけない」こと。事故は万が一にもあってはいけないため、ルートの選定から、地元住民への説明と理解、当日の警備などで万全を期し、予測不可能な子どもの動きに対応できる体制を整えています。
長寿番組につながった制作スタンス
安全面に気をつけたうえで重要なのは、「絶対にバレないように撮影しなければいけない」こと。子どもたちはいつ出発するかすらわからず、泣き出して中断することも多いだけに、制作サイドには集中力と忍耐が求められますし、変装、撮り方、トラブル時の声かけなど、1つひとつの行動に細心の注意が払われています。
さらに制作サイドの努力を裏付けるのは、「それだけ苦労して撮っても、番組内で放送できるのは10~20%程度にとどまる」こと。おつかいが成立したケースでも、ゴールデンタイムのバラエティとして見てもらえるドラマ性や感動がなければ放送は見送らざるを得ません。
また、放送できなかった家族へのアフターフォローを欠かさないところも出演者に寄り添った配慮の1つでしょう。
それ以外でも制作サイドは、安全に配慮したロケであることを感じさせるために「スタッフの姿をあえて映り込ませる」などのさまざまな工夫を施していますが、それでも「あぶない」「かわいそう」などの批判があがってしまうのがキッズドキュメントの難しいところ。
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