このレポートの内容を踏まえて、安保関連の安倍内閣の動きと見比べると、一連の安倍内閣の行動が、安倍晋三首相の個人的な政治思想に基づくものというより、アメリカ側の「軍事的協力の要請」に従ったものであることは歴然ではないでしょうか。
「対中国包囲網」は日本独自の信用力を活かせ
こうした安倍内閣の、米軍の「下請け的な行動」は、きわめて疑問の多いものです。日本はもともと、領土など政治的問題の解決を武力に頼らないという点で、アジアの多くの国で中国よりもはるかに信用されています。
もし、日本が今後もアジア太平洋地域の平和と安定に貢献するのであれば、アメリカとの「軍事協力」を通じてではなく、平和的姿勢についての独自の信用力を活かして、対中国包囲網の結節点となっていくべきです。
安保法制による集団的自衛権の容認は、日本の武力行使についてのアジア諸国の不安を掻き立て、対中国包囲網を形成する上ではマイナスになりかねないのではないでしょうか。安倍晋三首相が、「現在の憲法はGHQの押しつけ」と言いながら、憲法解釈について結局は「アメリカの言いなり」になっていることは、自己矛盾しているとしか言いようがありません。
もしアメリカ政府の意を受けて、憲法違反が指摘されている同盟強化に踏み込むとするなら、その是非について国民の賛否を問うのが筋です。それをないがしろにすれば、安倍政権の支持率も急低下し、2016年の参議院選挙をにらんで与党分裂の可能性も出てくるかもしれません。
しかも、17日の「新国立競技場の見直し」は16日の安保法案の衆院通過直後に発表されました。私が前回の記事「政権にすり寄る『御用メディア』に騙されるな 日本人の生活は、ますます苦しくなっている」でも書いた通り、「御用メディア」は政権寄りのバイアスのかかった報道をするものです。
今回、政府筋では「御用メディア」が新国立競技場の見直し報道を積極的にしてくれることで、安保報道が相対的に埋もれることを狙っていたのでしょうか。また、「たとえ政権の支持率が一時的に下がっても、来年には国民は忘れているだろう」「今回、新国立競技場の建設計画について抜本的見直しを発表したことで、支持率の低下が止まるだろう」などと高をくくっているのかもしれません。しかし、日本国民はそんなに愚かではないと思われます。
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