憲法改正しない安倍首相は自己矛盾している

米国の要求丸飲みでは中国包囲網は築けない

第1に、中国共産党政権の「接近阻止・領域拒否」戦略に基づく中国海軍の増強と行動範囲の拡大に対して、アメリカの「エア・シーバトル構想」に則って日本の海上自衛隊が対峙し、尖閣諸島周辺はもちろん、中国がベトナムやフィリピンと係争を繰り返している南シナ海においても、平和と安定の維持のため、米軍に協力して共同で監視活動を実施すること。

第2に、中東・ペルシャ湾のホルムズ海峡の安全航行の確保のため、イランの封鎖の兆候が明らかになった場合には、日本単独で海上自衛隊の掃海艇を派遣し、機雷を除去すること。

第3に、国連平和維持活動において、他国の部隊の護衛を可能とするよう、派遣部隊の法的権限を拡大すること。

アメリカ側には、かつてエジプトがアラブ諸国の結節点となったように、日本をインドやASEAN諸国を束ねる結節点としたいという期待があるようです。逆に、そうした形でアメリカに協力する意志がないのであれば、「日本は今後、二流国になる」と警告しているのです。

また、このレポートではアメリカ政府に対しても、「日本へのLNG供給を容易にする」「日本のTPP参加を促す」「日本の防衛産業に対し、オーストラリアなど他の同盟国への輸出を働きかける」「大統領による政治任用の際、日米同盟を深化させることを考慮する」などの提言を行っています。

レポートは今も日米両政府に影響を与えている

アーミテージとナイのレポートはあくまで「政府外からの提言」ではあるのですが、このレポートが日米両政府に与えている影響は非常に大きいようです。

現在、オバマ政権ではこのレポートで提言されたとおり、多くのLNG生産基地を建設して日本向けにも輸出を始めようとしていますし、日系人のハリス大将を太平洋軍司令官に起用したことも、レポートの提言に沿ったものです。

安倍政権でもレポートの提言どおり、TPP交渉に参加を決め、潜水艦技術をオーストラリアに提供しようとしています。さらには、「平和安全法制整備法」「国際平和支援法」という、いわゆる安保法制の2法案を閣議決定し、「自国が直接攻撃されていなくとも、密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、武力をもって阻止する」という「集団的自衛権」を容認しようとしています。

安倍晋三首相は2015年2月の国会で、集団的自衛権行使の具体例として、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合を挙げ、「わが国にかつての石油ショックを上回る混乱と深刻なエネルギー危機が発生しうる」として、「集団的自衛権が容認されれば、わが国独自の判断でホルムズ海峡の機雷を除去することが可能になる」との認識を示しました。これなどは、まさに第3次アーミテージ・ナイレポートに書かれている内容そのままです。

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