生成AIへの取り組みでアップルの歯切れが悪い訳 協業するオープンAIとの間にも微妙な距離感
サツキバー氏と共同でAIの制御をリードしていた、グーグルの関連会社であるディープマインド出身のヤン・ライケ氏は、安全確保が後回しとなり「限界に達した」として退社し、同じくオープンAIから独立した、安全性をより重視するAIスタートアップ、アンソロピックに参画すると発表しています。
スタートアップにとって、事業成長を目指すことは宿命です。
各社が矢継ぎ早に新製品や性能アップを発表する激流の中にあって、安全対策に力を割くことは、一面では、成長へのブレーキにもつながりかねません。
しかも、オープンAIには、グーグルの広告事業のような、生成AI以外の収益の柱が十分にありません。
こうした事情が絡み合って、社内にジレンマや困難があることは想像できます。サツキバー氏らの退任を、その象徴ととらえることもできるでしょう。
このように、人の動向に目を凝らすことで見えてくる風景もあります。退社や解任のような大きな動きだけではなく、開発者会議のように、トップが公の場に現れるイベントも同じです。
大々的なイベントの基調講演でCEOが語るのは当然として、それ以外に誰が登壇して語るのか? そんなワンシーンからも見えてくることがあります。
新製品・新機能だけに目を奪われるのではなく、その背後でどのような人材の移動や台頭が起きているのかにも目を配っておきましょう。
PCに焦点を当てるマイクロソフトの戦略
2024年5月に開催されたオープンAIの発表会とGoogle I/Oのわずか1週間後には、マイクロソフトも生成AI向けの新たなPCを開発したことを発表しています。
「Copilot+PC」と名付けられたこの新製品の特徴は、生成AIを、クラウド経由だけでなく、PC端末上でも利用できる点です。つまり、インターネットにつながっていなくても、回線が遅い状態であっても、生成AIを利用できるということです。
スマホのOSとして高いシェアを占めているアンドロイドを持つグーグルに対して、マイクロソフトはPCのOSにおいて、ウインドウズで高いシェアを占めています。だから、マイクロソフトは主戦場をPCにしているのでしょう。
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