(第14回)グーグルとトヨタは本質的に異なる企業

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グーグルの株価も経済危機で落ち込んだ(広告会社なのだから当然のことである)。トヨタとの違いは、そこから回復したことだ。経済危機までの株価急上昇は、決してバブルではなかったのである。

今後、グーグルはさらに成長するだろうが、トヨタが成長できるかどうかはわからない。新興国の自動車メーカーが成長し、自動車がガソリン車やハイブリッド車から電気自動車に移行したとき、トヨタは生き残れるかどうかさえわからない。トヨタは新しいものを作り上げたのではなく、確立された自動車産業の改善をしただけだからだ。

グーグルの株価がこれだけ上昇したのは、そのサービスが人々の生活を変えてしまったためだ。今でもはっきりと覚えているが、90年代末、ウェブサイトの急増に伴い、それまでの検索エンジンが機能しなくなった。重要でないサイトばかりが表示され、目的のサイトが探し出せないのである。そのときに重要度の順に順位づけるグーグルの検索エンジンが登場し、この問題を解決した。グーグルの検索がなければ、インターネットは使い物にならなかった。


野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)


(週刊東洋経済2011年9月17日号)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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