国家の後ろ盾が必要な企業と不要な企業
「国家との結びつき」という観点から見ると、両社は大きく異なる。
トヨタは、典型的な「戦時産業企業」だ。第2次世界大戦前の日本では、GMとフォードが自動車市場を支配していた。しかし、戦争遂行に自動車が重要な役割を果たすことから、商工省が立案した自動車製造事業法が1936年に成立し、外国自動車会社の日本国内での活動が著しく不利な立場におかれた。この法律により許可会社とされたのが、日産自動車と豊田自動織機自動車部(後のトヨタ自動車工業)である。
戦後の日本においても、自動車産業と国の結びつきは強かった。とりわけ90年代後半からはそうだった。トヨタの首脳が経団連の会長に就任し、経済政策に大きな影響を与えた。90年代後半からの円安政策は、自動車産業のために行われたようなものである。トヨタの連結営業利益が2007年3月期に2兆円を超えたのは、トヨタ独自の力によるというよりは円安のためだった。つまり、国の経済政策に助けられて空前の利益を挙げられたのだ。
その証拠に、経済危機後、為替レートが円高になってからは、トヨタの利益は急減した。トヨタは日本経済がどうなるかによって大きな影響を受けるのだ。これに対して、グーグルの利益は、為替や金利がどうなっても関係ない。前々回、「国の強さと企業の強さがあまり関係しないようになった」と述べたが、グーグルは、国の強さと関係がない企業の典型と言えるだろう。