うらやましい!Googleの人事評価と福利厚生 人事担当責任者が語る「社員を尊重する」ワケ

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「当然のことでもあった。大きなリスクを選ぶことによって不利益を被るわけではないという姿勢を、会社として明確にしたかったのだ」

ランチ、送迎バスを無料にする理由

ラズロ・ボック(グーグル人事担当上級副社長)●1974年ルーマニア生まれ。米イェール大学でMBA取得。2006年からグーグルで人材部門を率いる。日本で英語教師も。

「食事と軽食を無料で提供していることは、学術研究にもとづく考察が現実の世界にあてはまるかどうかを確認する実験にうってつけだ。

カフェテリアは基本的に1日2食(朝食と昼食か、昼食と夕食)。セルフサービスのマイクロキッチンにはつねに飲み物(炭酸飲料、ジュース、お茶、コーヒーなど)と軽食(生の果物、ドライフルーツ、クラッカー、チップス、ダークチョコレート、キャンディなど)がある。

オフィスの規模によって異なるが、社内にジムや診療所があり、カイロプラクティクスや理学療法、パーソナルトレーニング、エクササイズとヨガとダンスの教室を利用できるほか、ボーリング場もある。医療サービスとパーソナルトレーニングの料金は社外と同じレベルだが、施設や教室は誰でも無料で利用できる」

グーグルで働くことについて、周囲が最もうらやましがることのひとつが、この至れり尽くせりの福利厚生だろう。食事については、健康と寿命にかかわる要因の中ではコントロールしやすいものとの位置づけで、社員の体調管理に一役買っている。

さらに社内で提供されているサービスの例を挙げてみよう。

・ATM(現金自動預け払い機)
・自転車の修理
・洗車とオイル交換
・ドライクリーニング:所定の場所に出すと数日後に仕上がっている。
・産地直送の有機食品と肉類の配達
・ホリデー・フェア:業者が社内で商品を販売する。
・移動美容室とサロン:美容室の椅子が設置された大型バスがオフィスに来る。
・移動図書館:オフィスがある多くの都市で実施している。

 

高収益のグーグルだからこそできること、と思いがちだが、意外にもそれほどコストはかかっていない。

「これらのサービスについて、グーグルは基本的に費用を負担していない。会社が業者に支払いをするわけではないのだ。サービスを提供したい起業家が申請して、社内で実施する。料金は利用した社員が払う(会社が団体割引を交渉する場合もある)。食料品の配達など、社員が自ら運営しているサービスもある」

シリコンバレーでは、グーグルに来た移動美容室は翌日にはヤフーを訪れるという。

会社の規模が大きくなるにつれ、創業時のようなコミュニティ意識をどう維持するかがグーグルにとっても大きな課題になってきている。

日本企業でも夏休みにあるような「子どもの職場参観」をグーグルでも以前から実施しているが、2012年からはついに「親の職場参観」を開始した。子どもの職場を見に来た親たちは皆、目に涙をためて感動しており、子どもとの距離が縮まったと喜び、感謝していたという。ボック氏も、「私にとって、グーグルで働き始めてからいちばんうれしい1日だった」と語っている。

「週刊東洋経済」2015年6月13日号に一部加筆し転載)

山川 清弘 「会社四季報オンライン」編集部 編集委員

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やまかわ・きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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