「見える金融」は広がるか、鎌倉投信の100年計画
折しも08年秋にリーマンショックが直撃。今も欧州財政問題などのリスクに世界は神経質になっている。
そうした喧噪から離れ、古都鎌倉で起業。古民家を改装し、オフィスとして活用している。
職場だけでなく、投資先も一変した。前職での投資先は世界が舞台だったが、現在はあくまで国内の「いい会社」が対象。ツムラなど東証1部上場企業も含むが、多くは知名度の低い企業だ。
ただでさえ、株価が低迷する日本は厳しい運用環境。それでも「市場が縮小する中で、顧客を創造する会社こそが強い会社。丁寧に見ればいい会社は必ずある」(鎌田氏)と楽観的だ。実際、東日本大震災後の株価回復はTOPIX(東証株価指数)と比べても顕著。投資先の実力に加え、新井氏は「裏側ではクオンツ運用の手法を通じ精緻なリスク分散をやっている」と明かす。
30代、40代など現役世代を中心に、投資家層は徐々に広がっている。しかし鎌倉投信の収入は年率1・05%の信託報酬のみ。投資先100社、純資産総額100億円を目標に掲げ、採算ラインはまだ遠い。
月刊『投資信託事情』の島田知保編集長は、「若い人を中心に投資の意味を考える人が出てきている。そういう人に魅力を伝えられれば、良質なカネは集まるはず」と期待する。
高度化、複雑化する世界に背を向けた金融マンたちは、新たな投資の習慣を根付かせることができるのか。挑戦は始まったばかりだ。
(本誌:許斐健太 撮影:鈴木紳平 =週刊東洋経済2011年9月17日号)
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