「線状降水帯」ってそもそも何?なぜキケン? 予測精度の向上も、これからの季節は要警戒
発生メカニズムはおおむねわかっているのですが、水蒸気の量、大気の安定度、風など複数の要素が複雑に関係しているため、まだ不明点が多いです。
2つ目は、線状降水帯周辺の3次元分布が正確にわからないことです。
雨雲のもととなる湿った空気は海から補給されることが多いため、線状降水帯は海上から陸上にかけてできやすいです。海上は観測データが少ないので、水蒸気がどれくらい流れ込むのかなどが正確にはわかりません。
そして3つ目は、予想のための数値予報モデルに課題があることです。
現在、気象庁で利用されている数値予報モデルは、最も細かい水平解像度でも2キロです。この解像度では、個々の雲について発生や発達を十分に予想できません。
予測精度の向上を目指す
まだ課題はあるものの、より詳細な予測が可能になったのは、観測・予測精度が向上しているからといえます。
気象庁は、2020年に「線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ」を発足させて、線状降水帯の予測精度向上に向けて、大学や研究機関と連携した機構解明研究、数値予報技術開発を推進しています。
2021年度からスーパーコンピュータ「富岳」を活用して、線状降水帯の予測に役立てています。
今年から、新しい気象庁スーパーコンピュータシステムの運用が始まりました。昨年に導入された「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」と併せて、更新前の約4倍の計算能力になっています。計算能力が向上することで予測精度が上がり、予報時間が延長されています。
線状降水帯の予測に重要となる、水蒸気などの観測、レーダーによって積乱雲の発達過程などを把握して、局地的大雨の監視を強化する取り組みも進められています。2029年度には、観測能力を高めた次期静止気象衛星「ひまわり」の運用が始まります。
こうした予測精度の向上によって、2029年からは線状降水帯の予測情報を市町村単位で提供されるようになる予定です。
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