豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら 豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら
男は物騒なことを言う。倫太郎は苦笑した。
「それは殿下の時代のことです。今はよほどの悪事に加担しないかぎり死刑になどなりません。まして家族や親せきが同罪になることもないのです」
「そうかもしれませんが、殿下の時代ほど治安は悪くないので……」
天下人はしわくちゃな顔を、さらにしわくちゃにして鼻を鳴らした。
「それにしても……金田社長は強烈なカリスマとバイタリティーで組織を引っ張ってきた人物です。まさか、あんなに簡単に裏切者が出るとは……」
金田の顔を思い返し、倫太郎は溜め息をついた。今回は彼を追い詰めるのがタスクだったが、あまり気持ちのいい仕事ではない。とはいえ、あそこまで不遜な男なら相当な余罪があるだろう。それは決して許されるものではないとも思った。
自信なくして生き残ること能わず
「いえ」
倫太郎は首を振った。
「金田社長は公器である上場企業を、いつまでも我が物のように考えていました。それは間違いですし、糺すのに躊躇はありません。ただ、あまりにうまくいったので……」
「すごい自信ですね」
倫太郎の口から思わず言葉が出てしまったが、この男が生涯で成したことを思えば当然だ。溢れ出る自信、オーラ、そして見る者を惹きつける器の大きさ。すべて桁違いだ。これほどスケールの大きい男を、倫太郎は見たことがなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら