豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら 豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら

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「なんじゃ。またぞろ同じことを起こすぞ。将に情けは不要。一族郎党、ことごとく根絶やしにせよ。将はその覚悟で生きねばならぬ」

男は物騒なことを言う。倫太郎は苦笑した。

「それは殿下の時代のことです。今はよほどの悪事に加担しないかぎり死刑になどなりません。まして家族や親せきが同罪になることもないのです」

「それならばやりたい放題ではないか。秩序が保てぬ」

「そうかもしれませんが、殿下の時代ほど治安は悪くないので……」

「訳の分からん時代じゃの。儂に言わせれば糞のようじゃ」

天下人はしわくちゃな顔を、さらにしわくちゃにして鼻を鳴らした。

「それにしても……金田社長は強烈なカリスマとバイタリティーで組織を引っ張ってきた人物です。まさか、あんなに簡単に裏切者が出るとは……」

「あの者は勇将だが良将にあらず。己が力を過信し家臣や周囲の者を顧みぬ。そのうち身に迫る危険すら感じぬように成るものじゃ。はて……儂の近くにも、そのような者が……」

金田の顔を思い返し、倫太郎は溜め息をついた。今回は彼を追い詰めるのがタスクだったが、あまり気持ちのいい仕事ではない。とはいえ、あそこまで不遜な男なら相当な余罪があるだろう。それは決して許されるものではないとも思った。

自信なくして生き残ること能わず

「どうした? 同情したのか?」

「いえ」

倫太郎は首を振った。

「金田社長は公器である上場企業を、いつまでも我が物のように考えていました。それは間違いですし、糺すのに躊躇はありません。ただ、あまりにうまくいったので……」

「負けると思わば負ける。勝つと思わば勝つ。逆になろうと人には勝つと己に言い聞かさねばならぬ。儂は、上杉謙信であれ武田信玄であれ、この儂には敵わぬと信じておった。彼奴らが生きておれば必ず家臣にしたであろう」

「すごい自信ですね」

倫太郎の口から思わず言葉が出てしまったが、この男が生涯で成したことを思えば当然だ。溢れ出る自信、オーラ、そして見る者を惹きつける器の大きさ。すべて桁違いだ。これほどスケールの大きい男を、倫太郎は見たことがなかった。

「倫太郎。人の差は、前に出るか出ぬか。人より早く働き、人より速く決断し、人より大きく広く物事を見る。それだけじゃ。お前は知恵がある。が、狭い。己の正義では人は動かぬ。人は理屈でなく利で動く。それを忘れるな」
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