豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら 豊臣秀吉が現代に甦って問題企業に喝を入れたら
「水上! 余計なことを喋るな! おいッ、伊志嶺!」
慌てた様子で金田は水上を睨みつけ、水上の隣に座る男を指さした。伊志嶺と呼ばれた男は弾かれたように背筋を伸ばし、機械仕掛けの人形のごとく立ち上がった。
「財務本部長としては、なにも問題ございません!」
倫太郎は、伊志嶺の隣に座る男に視線を移す。財務部長の西村だ。
「西村部長」
「は、はい」
「この買収した会社、マリーンシステムの試算表(※)を見せてもらえませんか」
(※)決算報告に使う資料のもととなる、詳細な内容が記載された表
明らかにおかしな決算書の裏側とは
「試算表ですか……」
西村は目をぱちぱちさせた。
「マリーンシステムには15億の価値がついていますが」
倫太郎は鞄から資料を取り出した。
「昨期のマリーンシステムの売上が8千万、最終決算は2千万の赤字です。取り立てて新しい技術を持っているような事実もない。どうすれば15億もの価値がつくのでしょうか」
「それは……」
西村の顔が歪み、明らかに動揺の色が浮かんだ。
「マリーンのシステムは、まだ研究開発の途中だ。来年から本格始動する!」
「西村さん。私はあなたに聞いています」
倫太郎は金田に視線を移さず、まっすぐに西村の目を捉えた。
「なんだと!」
興奮した金田は、今にも倫太郎につかみかかってきそうだ。
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