野村ホールディングスは米連邦住宅金融局の提訴で新たな不透明要因が追加、世界的な金融不安も懸念材料
野村側は今のところ今回の件について「コメントは差し控える」としている。
野村がMBS販売に関連して米国で訴訟を起こされたのは初めてではない。今年4月には、ボストン連邦住宅貸付銀行から、MBSのローンに関して不実記載があったとして購入の取消、損害賠償を請求(購入額等は不明)されているほか、7月にも米国信用組合管理機構から同様に損害賠償(購入額は8300万ドル)を求められている。ただ、今回の請求額の規模はそれらより大規模と見られる。
今回の件はあくまで訴訟案件であり、現時点では業績予想に織り込まない。ただ、将来のリスク要因の一つとして留意しておく必要がある。また、米国や欧州の銀行の信用不安が広がることで、金融市場が混乱し、トレーディング部門や株式引受部門などの収益環境悪化が続くことも懸念材料となる。野村にとっては、こうした間接的な影響のほうが大きいかもしれない。
野村は第1四半期(11年4~6月期)において、税前利益は343億円(前四半期比8%減)、純利益は177億円(同49%増)となったが、税前利益のうち243億円は野村土地建物(野村不動産ホールディングスの親会社)を完全子会社化したことに伴う「負ののれん代」など一時的利益が占める。既存ベースでの税前利益は100億円にとどまり、ホールセール(法人)部門については149億円の赤字となっている。
第2四半期(11年7~9月期)に入っても厳しい市場環境が続いており、業績改善は見込みにくい。収益環境低迷の長期化を受け野村は、今後1~2年かけてホールセール部門のコストを年間4億ドル(300億円程度)削減することを決断。大幅赤字が続く欧州法人(旧リーマン・ブラザーズの社員を承継)を中心に、ホールセール部門で百人単位の人員削減に踏み切らざるを得ない状況だ。
「東洋経済オンライン」では、今期の税前利益については野村土地建物子会社化に伴う一時的利益が大きく、前期比小幅増益の1000億円を当面据え置く。たが、その達成は徐々に厳しくなりつつあると考えている。
(中村 稔 =東洋経済オンライン)
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 営業収益 営業利益 経常利益 当期利益
◎本2011.03 1,385,492 ・・ 93,255 28,661
◎本2012.03予 1,400,000 ・・ 100,000 50,000
◎本2013.03予 1,450,000 ・・ 120,000 60,000
◎中2010.09 634,434 ・・ 28,068 3,373
◎中2011.09予 650,000 ・・ 45,000 25,000
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1株益¥ 1株配¥
◎本2011.03 7.9 8
◎本2012.03予 13.5 8
◎本2013.03予 16.2 8-10
◎中2010.09 0.9 4
◎中2011.09予 6.7 4
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