過去の成功体験は捨てロングセラー育成に転換--資生堂社長 末川久幸
新製品を半数に絞り顧客目線の開発を重視
今期からは新製品の品目を従来の半数に絞り、ロングセラーを育てる戦略に転換する。商品開発の仕組みも変えた。コンセプトを決めた後に、研究所で開発し、宣伝を考えるというリレー式でなく、商品企画、技術部門や宣伝・パッケージなどの部門が一斉に議論する。
製品化するまでにも3段階ぐらいのゲート(関門)を作り、審査に通らなかったら次の段階に進ませない。ボツになる製品も出てくるし、発売時期に間に合わなくても、よい製品が完成しないかぎり市場には絶対に出さない。
成果も出始めている。今春、主力ブランド「マキアージュ」では口紅の新製品発売を見送り、昨秋投入した落ちにくいことが特長の口紅のプロモーションを再び行った。恥ずかしい話だが、新製品の売上高は一般に発売後1年経つとL字カーブをたどり、当初の2%にまで落ち込んでしまう。
そこで、この口紅では、どのように塗ったら落ちにくくなるか使用方法がわかりやすく伝わるよう、CMを見直して、見せ方を変えた。すると、売り上げは販売当初よりも高くなりV字回復となった。
──来年4月からはWeb展開を本格化させる計画ですね。
今後Web領域の顧客は確実に拡大する。しかし、単純にネット通販を始めるつもりはない。「ビューティープラットフォーム」というWeb上のショッピングモールを開き、美にかかわる異業種企業にもサイトを出してもらう。スポーツクラブやメーカーなどを検討している。そこで資生堂に興味を持った方に当社のサイトに来てもらう。オンラインでのカウンセリングや、店舗を案内するコンテンツなどを用意する。