息を吹き返す東京電力、電気料金値上げも浮上、貧乏くじを引く原発事故被害者と利用者
賠償は政府の原子力損害賠償紛争審査会の指針に基づいて実施されるが、指針を不服とする被害者などが集団で訴訟を検討する動きもある。東電側は「関連や偶発、風評などの被害については争う覚悟を決めている」(みずほ証券の寺澤氏)。
仮に賠償金が交付金で相殺されたとしても、事故収束や訴訟費用など想定外の費用が膨らんで、最終赤字を出し続けることになれば、ジリジリと財務が毀損され続けかねない。
そうなると、「営業利益段階で黒字にするには、少なくとも10%の値上げは必要」(柴田氏)となる。
冒頭の観測どおり、すでに東電は電力料金の値上げを打ち出そうとしている。10月に提出する特別事業計画書には、向こう10年程度にわたる事業の収益計画などが盛り込まれるとみられるが、ここで値上げを織り込むかどうかが焦点となる。ただ、利用者や企業からの猛反発が見込まれる中、正面突破は困難だろう。
東電を囲む環境が目まぐるしく変わる中、「このままでは東電の独り勝ちとなる一方で、福島の被害者や東電利用者が貧乏くじを引くことになる」(慶応大の岸教授)と、懸念の声も上がる。機構法の成立によって、せっかく沸き上がった、国民の間でのエネルギー政策見直し議論も尻すぼみになってしまった。
利用者を中心に国民の監視の目が緩む中、東電は着実に“活力”を取り戻しているのである。
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(本誌:倉沢美左 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2011年9月10日号)
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