兼松、「ICTと半導体分野」で打つ2027年への布石 グループ一体運営に半導体では「落ち穂拾い」も

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電子・デバイス部門の純利益の6割以上を稼いできた事業が抜ける影響は小さくない。だが同部門の事業は、兼松コミュニケーションズの携帯電話販売のほか、液晶製造装置や半導体製造装置、電子部品検査装置、電子材料の販売など幅広い。

「電子・デバイス部門も2027年3月期にはM&Aも含め営業利益を1.5倍に引き上げる」。電子・デバイス部門長の原田雅弘常務は意気込む。利益成長を牽引するのが半導体製造装置関連のビジネスとなる。

半導体業界では、AI向けなどの先端分野に注目が集まっている。アプライドマテリアルズや東京エレクトロンなど、製造装置の大手メーカーも最先端装置の据え付けやメンテナンス対応に追われている。

一方、レガシー半導体の分野を見渡せば、富士電機やローム、ルネサスエレクトロニクス、三菱電機といったパワー半導体の強豪が国内投資を活発化させている。メンテナンス需要も旺盛だ。そこで兼松は「製造装置大手の手が回らないレガシー半導体の分野で落ち穂拾いでニーズを拾っていく」(原田氏)。

後工程工場の投資加速も見込む

兼松は昨年、福岡の半導体装置エンジニアリング会社を買収。今年7月には大阪のパワー半導体専門商社をグループ傘下に加えた。半導体装置関連事業では、半導体製造設備の販売、メンテナンスの兼松PWSやルモニクス、半導体検査装置設計・開発のNSテクノロジーズといった企業群を抱える。

こつこつと買収を続けてきたことで、層が厚くなってきている。原田氏は、「こうしたM&Aを通して中古半導体装置や部品の国内外でのクロスセルに加え、メンテナンス要員を適材適所で配置することができる」と言う。

また、台湾や韓国をめぐる地政学リスクの高まりや円安の長期化を受けて、前工程(ウェハー上に電子回路を形成する工程)工場の投資が日本で一段と加速するとみる。供給体制や納期の問題から、当然、ウェハーから半導体チップを切り出す後工程工場への投資も日本で続くと考えられる。

「前もって装置ビジネスや後工程工場に向けたサービスへの投資を行うことで、将来の爆発的な変化に備えていく」(原田氏)。兼松は2027年に向けた布石を着々と打っているようだ。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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