SCの株主提案は、行使された議決権の半数以上が賛成すれば成立する(過半の賛成率を得た取締役候補が取締役の定員数を上回った場合を除く)。すでに3分の1弱をSCが握っている以上、可決も現実味を帯びる。
SCは4月に株主提案を発表して以降、長く業績を改善できなかった経営陣の無策を指摘するとともに、2023年に行った本社ビルの売却と賃貸用不動産の取得も「資本効率の改善に寄与せず、赤字継続への批判を免れるために(売却益により)会計上の最終損益を黒字化させることが目的だった」と批判してきた。
対するダイドーは5月20日、2027年3月期までの3カ年を対象にした中期経営計画を策定し、初めて公表した。2027年3月期に売上高360億円(2024年3月期は287億円)、営業利益15億円(同4億円の赤字)を目指すという。ブランド価値が失速しているニューヨーカーは売上拡大を目指さない一方、ブルックス ブラザーズでは新規出店やECへの投資を通じて成長を狙う。
直後の5月24日には、経営陣の刷新も表明した。コンサル会社のCEOであり、中期経営計画の策定にも関わった山田政弘氏を代表取締役CEO候補として提案し、同時に現在の社長らは経営から退くとした。
東洋経済の取材に応じた山田氏は「これまでマーケットに対する情報発信が足りなかった。中計は細かい数字を積み上げた必達目標だ」と話す。
SCの提案は「会社に失礼だ」
ただ、SC側は納得していない。
ダイドーが新取締役候補を発表後、即座に反対を表明。CEO候補の山田氏は兼職が多く、経営に専念できないうえに実績もないこと、コンサルとして利益相反関係にあることなどを指摘した。中期経営計画も実現性が乏しいとして、SCの株主提案に賛成するよう株主に呼びかけた。
様相は混迷の度合いを深めていく。ダイドーはSCの主張に対して反論する文書を発表。SCの株主提案こそが不適切な主張であるとして、株主に対し会社提案への賛同を強く呼びかけた。山田氏はSCの主張に対し、「正直言って会社に対して失礼だ。明確な事業計画もなく、会社のことを考えた取締役選任案ではない」と憤る。
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