なお筆者自身は、年初にギリシャの政権交代でチプラス政権となってから、ギリシャとEUの間で一連の金融支援交渉が、ここまで大きくもつれるとは予想していなかった。債権者側の中心であるドイツの財政状況が改善していることもあり、支援交渉は現実路線で穏当に進むとみていたが、その見通しは甘かったと言わざるをえない。
ユーロ離脱については、ギリシャ国民が望んでいないので、ギリシャは引き続きユーロ圏に止まりながら、支援交渉をしていくとの見方がありえるかもしれない。実際、国民投票において緊縮反対の世論が示された7月6日以降も、EUなどの債権団は引き続き金融支援を続ける方策を模索している。
ギリシャがユーロを離脱してもリスクは限定的
ただ、実際にはギリシャ政府がユーロに留まることを望んでも、それを最後に決めるのはギリシャではなく、EU、ECBなど欧州の債権者であり、ギリシャの意向だけでユーロ離脱の可能性を考えるのは一面的に思える。
すでにギリシャの銀行にはユーロ紙幣が十分残っていないため、6月末から預金引き出しの制限が行われている。ECBによる、ELA(緊急流動性支援)によって最低限の通貨ユーロが、銀行システムに供給されている模様である。
ユーロという通貨発行権がないギリシャにおいて、ユーロが枯渇してしまえば、ギリシャでしか通用しない代用証書を発行するなどの措置が想定される。そうした事態に至るかどうかは、ギリシャ政府や国民の意向よりも、貨幣発行権を握るドイツなど大国の債権者側の政治判断に依存するのが実情だ。地政学的な状況などから、ドイツはギリシャのユーロ離脱を最終的には望まないといった観測も見受けられる。
政治判断次第であるため事態は流動的ではあるものの、今後、ギリシャがユーロ離脱に向かうことを含め、混乱が長期化する可能性も残っている。その大勢が12日に決まるということである。
もっとも、ユーロ離脱が起きたとしても、それが欧州や世界経済にとって大きなダメージをもたらすリスクについては限定的とみている。仮にギリシャがユーロ離脱に向かっても、他の周縁国の金利上昇に波及することを阻止する、ECBなどによる政策対応のツールはそろっているとみているためである。
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