ここ数年のギリシャなど南欧諸国の状況を踏まえると、自国において経済安定化政策を持ち続けることが極めて重要であることを、改めて実感せざるを得ない。
ギリシャにとって、現状のユーロはデメリット
ギリシャが経済苦境に至った要因はいくつか挙げられるが、2010年以降の同国経済を最も疲弊させているのは、ユーロに留まることと引き換えに、欧州の債権者側から多額の資金援助(債券借入)に依存し、その後の経済成長や労働市場を回復させる手段を失ったことに尽きるのではないか。
ギリシャがユーロを導入したことで、景気回復の切り札となる金融政策を手放し、財政が悪化すると債務削減のための大規模な歳出削減を実行させられ、確かに財政収支は改善した。
だがそれは自国の経済活動に深刻なダメージを及ぼす。2010年以降、ギリシャの実質GDPの水準は約20%落ち込み、それ以降ほとんど回復してない。また2015年以降は他の欧州諸国は循環的に景気持ち直しをみせたが、緊縮財政の足かせが大きいギリシャはその恩恵を受けていない。失業率は25%前後で高止まりし続けている。
ユーロという通貨システムは、各国にさまざまなメリットとデメリットを及ぼしている。もちろん、支援交渉の片方の当事者であるギリシャ政府の姿勢にも問題があるが、現在の欧州の政治状況を前提とすると、ギリシャにとってはそのデメリットが極めて大きくなっているように思える。
歴史を振り返ると、第2次世界大戦前には金本位制度への「教条的なこだわり」が世界的な不況の一因になった。また日本では、極度にインフレを恐れてデフレを許容した金融政策運営が低成長を長期化させた。このように、経済活動を円滑にさせるはずの金融・通貨制度が機能不全に陥ると、経済活動に大きな弊害を及ぼす例はいくつか挙げられる。
結局、経済合理的ではない理由で、硬直的な通貨・金融政策に固執することは、国民生活に大きな犠牲を強いる。ギリシャでは、ユーロ離脱を望んでいない声が依然多い。政治がそうした世論に迎合する限り、ギリシャ経済が長期停滞から脱するのは相当難しいのではないか。
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