MXの「神アプリ」は、日本のテレビを変えるか 「エムキャス」で全国どこでも視聴可能に

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一方、TOKYO MXの自社制作番組は情報番組が中心で、情報の新鮮さが何より重要だ。だから、エムキャスでは将来の情報番組の配信も見据え、VODでなく、放送と同時にどこにいても見られるサイマル配信を採用した。「朝の帯番組『モーニングCROSS』を配信できるようになれば、朝の通学・通勤時間に全国の若年層の視聴者を取り込むことができる」と茅根部長は意気込む。

時代に対応したテレビ局のサービス

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『ニセコイ』などアニメを中心に25番組が視聴できる

テレビから離れた若年層にしてみれば、「やっと時代に対応した」という印象なのかもしれない。都道府県を基本単位として放送対象エリアが区切られている地上波放送とは違い、インターネットなら全国同時に一斉配信ができる。

ただそうなると、キー局とネットワーク系列局のビジネスモデルは成り立たなくなる可能性があり、現時点でキー局は同様の取り組みを積極的に進めようとはしていない。系列局とのしがらみがないTOKYO MXだからこそ、エムキャスの実証実験に取り組めたわけだ。

1995年の開局と独立放送局の中でも後発組で、社員数は100人程度のため「身軽で小回りが利き、ほかとは違ったことに挑戦しやすい会社」だと、ある社員は言う。東京都や東京商工会議所などの意向で開局された経緯があり、当初は東京地域のニュース番組枠を中心に編成されていたが、3%程度を出資する東京都の存在感は現在、週2回の『東京都知事定例会見』の番組枠にその面影を残すだけになった。

夕方5時台の看板番組『5時に夢中!』や夜9時台の『バラいろダンディ』、お笑い芸人ロンドンブーツ1号2号の田村淳氏とジャーナリストの上杉隆氏という異色コンビが司会を務めて話題となっている『淳と隆の週刊リテラシー』など、“尖った”番組が新卒で入社したプロパー社員によって生み出されている。エムキャス事業を中心となって推進する茅根部長と服部部長もプロパー社員だ。

「TOKYO MXのインターネット配信への取り組みは、エムキャスと4K映像配信の2本立てで進めていく」と服部部長は言う。超高精細な4Kの膨大な映像データは現在の圧縮技術では電波の帯域が足りず、今のところ地上波放送では実現できないとされている。そこで同局は、インターネットと接続し、地上波放送と通信を融合させて映像コンテンツを楽しむことができるハイブリッドキャスト対応のテレビで、地上波放送の映像と通信経由での4K映像を切り替える仕組みを考え出し実証実験を行っている。

テレビの前に定められた時間にいなければ見ることができない地上波放送の不便さを、ネット配信を活用して改善できるか。キー局のようなしがらみがなく、小所帯ゆえに小回りの利くTOKYO MXが、日本におけるテレビのあり方を変えるかもしれない。

中原 美絵子 フリーライター

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なかはら みえこ / Mieko Nakahara

金融業界を経て、2003年から2022年3月まで東洋経済新報社の契約記者として『会社四季報』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』等で執筆、編集。契約記者中は、放送、広告、音楽、スポーツアパレル業界など担当。

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