MXの「神アプリ」は、日本のテレビを変えるか 「エムキャス」で全国どこでも視聴可能に
在京キー局と呼ばれる、日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビジョンは各地にネットワーク系列局を持つ。その系列局を通じてキー局は自ら制作した番組を全国で放送し、全国展開するスポンサーから多額の広告料を獲得できる。一方、TOKYO MXは視聴可能エリアが東京スカイツリーから約50キロメートルと狭く、どの系列にも属さない独立放送局。同社にとって、エリア拡大は宿願だった。
エムキャスはMXをどう変える?
「全国で視聴されるなら出てもいい、という出演者の方が増えるかもしれない。キャスティングにも幅が出る」(デジタルコンテンツ開発部の茅根由希子部長)
また、スマホやタブレット向け無料アプリでの配信なら、テレビ離れが進む10~20代の若年層にも番組を見てもらえる。若年層に人気のアニメ番組が充実しているというTOKYO MXの強みも生かせる。
アプリをダウンロードするときに、性別や生まれた年、住んでいる地域の情報を入力する機能を付けているため、番組や時間ごとの視聴傾向をデータとして獲得し、将来的には番組編成に役立てることもできる。「視聴エリアが狭い各地の独立放送局から、うちでも導入できないかと相談される」と、クロスメディア推進部の服部弘之部長は明かす。
ただし、「エムキャスはあくまでも来年6月末まで1年間の実証実験」と、茅根部長は強調する。現状、視聴できる番組は『ニセコイ 1st Season Selection』『シュタインズ・ゲート』など人気のアニメを中心に全25番組。自社で制作している平日朝7時から8時台の帯番組『モーニングCROSS』などは配信されていない。
放送番組をネット配信など放送以外で利用する場合、出演者、音楽、原作、関連映像、写真の著作権者などの許諾が改めて必要となり、どこか1カ所でも許諾を得られなければその番組は配信できない。今は各権利者団体に実証実験に協力してもらうという形で、配信できる番組を増やしている段階だ。スポンサーの許可を得たCMは放送と同じものを流しているが、広告料を上乗せして徴収することはしていない。
1年後、本格的にサービスとして提供し事業の収益化を考えることになれば、広告料をどのように権利者に配分するかという課題が持ち上がり、許諾を得るのは今以上に難しくなるだろう。そのため、実証実験が終わった後、サービスを本格的に立ち上げるかどうかはまだ決まっていない。
現在、インターネット上の動画配信サービスといえば、有料定額制や無料の見逃し配信など、好きな時間に好きな場所で視聴を開始できるビデオ・オン・デマンド(VOD)が主流。この方式は、視聴のタイミングがそれほど重要ではないドラマなどのコンテンツに向いている。
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