以上のように、コンセプトに沿って、3つの行為に当たる機能を手厚くしているため、ゲストはほぼ想定通りのサービスを受けられる。
宿泊価格は変動するが、高額なタイミングでも機能に納得したうえで選択するため、トラブルは少ない。また、価格については無料会員制度があり、最大10%の割引が受けられる。利用すれば1泊2500円~2万円前後、平均6000~7000円で宿泊が可能。この価格は現状、ビジネスホテルの最安値に相当する。
ナインアワーズのゲストはビジネスホテル利用者に近いが、より価格に敏感だ。彼らは都心の最安値の宿を探し、価格に応じてビジネスホテルとカプセルホテルを使い分けている。ただし、たとえビジネスホテルが1000円、2000円安くとも、客室写真に汚れが目立ったりクチコミの評価が低い際は、お洒落で清潔なナインアワーズを選ぶ人々だ。そして、場合によってはその決断を、睡眠解析サービスがあと押ししている。
デザイン性、睡眠解析サービス、清潔へのこだわり、3つの行為に基づく機能。これらが織りなす宿泊体験が、筆者が取材で感じたナインアワーズの価格以外の魅力である。それらの根底にはコンセプトがあり、これを明確に打ち出すことでゲストの期待値と合致することが、最大の強みと言えるかもしれない。単に価格や施設で勝負するのではなく、独自のコンセプトを掲げ、その体現を追求する姿勢は、他のサービス業にも不可欠なものと言えるのではないだろうか。
後編では、睡眠解析サービスと表裏一体で進める別事業と、経営哲学について紹介する。
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