倒産相次いだ「カプセルホテル」コロナ後の大変貌 徹底的な持たない経営でホテル事業の弱点を克服

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同社取締役の渡邊保之氏は、「当時から、いつか自然災害やオイルショックのようなインパクトが来ると予想しており、宿泊業が傾いた万一の際にも、経営を安定させられる別事業を模索していました」と振り返る。

検討をはじめた当初は、「デジタルに関わる事業にしたい」という漠然としたアイデアだった。だが、高齢化が進むなかでヘルステック事業が躍進をはじめ、日本人の睡眠への満足度の低さが注目されるなかで、行き着いた先が睡眠事業だ。

着想から5年が経過した2019年12月末、偶然にも、新型コロナ流行の直前に5億円の増資を受けることに成功。翌年1月から、医療機器メーカーなどの協力を得て睡眠解析サービスを準備する。

サービスを開始し、データ収集がはじまったのは2021年12月。人々が家にこもり、売り上げが激減していた時期だ。次々とカプセルホテルが倒産していた、まさにギリギリのタイミングだった。

『ナインアワーズ水道橋』6階に設えられた360度ガラス張りのラウンジ
『ナインアワーズ水道橋』6階に設えられた360度ガラス張りのラウンジ(写真:ナインアワーズ提供)

徹底的に「持たない」形態をいち早く取り入れる

創業時にもう1点、宿泊業のリスクヘッジとして導入された仕組みがある。徹底して「持たない」契約形態だ。

冒頭でも軽く触れたが、ホテル業界は初期費用が大きくなり、不況時には返済に苦労しやすいという弱点がある。

そこでナインアワーズは、土地建物はすべてオーナー会社が持ち、運営だけを請け負うビジネススタイルを取った。ボールペン1本、トイレットペーパー1つに至るまで自社では購入しない。人も採用・教育は担当するが、給与は店舗経費として請求する。昨今流入する外資系ブランドホテルなどに多い形態だが、カプセルホテル業界にあっては珍しかった。

この契約形態と増資、睡眠事業があったからこそ、コロナ禍で苦しい中でも赤字を最小限にとどめ、乗り越えることができたのだ。

ナイン
男性専用『ナインアワーズ品川駅スリープラボ for men』のカプセルスペース(写真:ナインアワーズ提供)
『ナインアワーズ浜松町』
『ナインアワーズ浜松町』の最上階には、見晴らしのいいラウンジと、屋上へ続くオープンテラスが。西側の窓からは東京タワーが間近に見える(写真提供:ナインアワーズ)
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