倒産相次いだ「カプセルホテル」コロナ後の大変貌 徹底的な持たない経営でホテル事業の弱点を克服

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宿泊業と睡眠事業、双方が密接に関係するナインアワーズのビジネス。その経営哲学は「事業を丸ごとデザインする」だ。ここでいうデザインとは、表に見えるサービスだけではなく、背景にある人やお金、データまでをロジカルに整理して形を整えていくという意味である。宿泊と睡眠解析サービス、ビッグデータの活用が相互に関わり合っているように。

2つの事業全てにおいてコンセプトを体現し、ゲストの動線や顧客想定までを計算して設計することを強く意識しているという。

『ナインアワーズ赤坂スリープラボ』
『ナインアワーズ赤坂スリープラボ』では、上下を90度回転させた4つのカプセルで構成されるキューブを、ランダムに配置している(写真:ナインアワーズ提供)

重ねて、一度デザインしたら、その在り方を守り続けるのもこだわりだ。たとえば施設デザインは、デザインチームが提案したものを原則変えない。自分たちが口を出すことはもちろん、オーナー会社からの変更意見も受け付けない。オーナーからは広告用の張り紙や冊子の設置などもよく頼まれるそうだが、それも絶対に承諾しないという。

その理由を渡邊氏は、「iPhoneにストラップを付けるとシンプルで美しい佇まいが壊れてしまうように、一度でも特例を作ると、全てが崩れる要因を作ってしまうからです」と説明する。それに、特例があるとルールも変えなければならず、運営もしにくくなる。変わらないことで、細部まで設計したデザインやオペレーションを守っているのだ。

『ナインアワーズ名古屋駅』最上階のラウンジ
デスクにコンセントがあり、爽快な眺めを前にPC作業も可能な『ナインアワーズ名古屋駅』最上階のラウンジ(写真:ナインアワーズ提供)

「カプセルホテルの海外輸出」に意欲

今ナインアワーズブランドは、東京、大阪、愛知、福岡、宮城で13ホテルを展開している。うち1軒が女性専用、1軒が男性専用だ。企業全体としては、仮眠ができる24時間サウナ『ドシー』、カプセルホテルに大浴場とサウナをプラスした『カプセルプラス』、オペレーションのみを受託しているホテルを合わせて全25軒を運営。目標は2030年に国内100ホテル、海外で50ホテルを運営することだ。

海外出店はヨーロッパや北米、アジアで検討しており、直近では、スイスのジュネーブで計画が進んでいる。その後、ロンドン、パリ、アムステルダムにも出店予定だ。

『ナインアワーズ浜松町』
ガラス張りの立体的なデザインが目を引く『ナインアワーズ浜松町』の外観。窓際にはデスクやテラスも(写真提供:ナインアワーズ)
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