キリン、ファンケル買収に透ける「期待と不安」 経営トップ、ファンケル関係者も不在の異例

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買収によってキリンHDは「内脂サポート」「年代別サプリメント」といったファンケルの健康食品ブランドを取得するほか、昨年8月にキリンHDが買収したオーストラリアの健康食品最大手・ブラックモアズとのシナジーも期待される。

各国の食品規制対応に詳しいブラックモアズの人材や、同社のシェアが高いオセアニア・東南アジアへの販路を獲得しており、ファンケル商品も拡販できる可能性がある。

吉村氏は「ヘルスサイエンスをビール・飲料事業に匹敵する事業に成長させたい。完全子会社化で制約を一気に解消し、成長軌道に乗せていく」と意気込む。今後10年以内に同事業で売上収益5000億円を達成し、アジア太平洋地域で最大級のヘルスサイエンス・カンパニーを目指すという。

ファンケル化粧品はどうなる?

一方、不透明感が払拭できないのが、ファンケルの化粧品事業の成長戦略だ。化粧品はファンケルの売上高の5割を占める主力事業で、40年以上続く祖業だ。コロナ禍ではインバウンド需要の剥落に苦しんだが、主力の「マイルドクレンジング」などメイク落としを軸に現在は回復基調にある。

「ファンケルの強みはオンラインとリアル店舗の連携。顧客データを武器に固定客化を進めている」と語るのは化粧品業界に詳しい大和証券の広住勝朗シニアアナリスト。通販や直営店舗での販売といった販売チャネルが売り上げの7割を占め、商品のリピート率も高い特徴がある。

今年5月、ファンケルの島田和幸社長は「今期の他社の利益計画がピークの2~5割にとどまる中、当社は2019年度以降5年ぶりに、過去最高の売り上げ、利益を更新する見通し」と自信を語っていた。

今後の成長のカギは、現状売り上げの1割程度である海外事業の拡大だ。2026年までの中期計画では海外事業の年間売上成長率を12.1%とし、日本で稼いだキャッシュを海外に積極投資する方針。スキンケア等を展開する「アテニア」のベトナム進出や、中国富裕層をターゲットにした「ブランシック」等を強化する。

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