カダフィ独裁に終止符、民主化へ動き出すリビア
カダフィ政権が事実上崩壊したリビア。NATO(北大西洋条約機構)軍に支援された反政府軍が、首都トリポリ南部にあるカダフィ大佐の居住区域兼軍事施設を制圧。42年続いた独裁体制は終焉を迎えた。
蜂起が始まったのは半年前。同時期に起こったチュニジア、エジプトの民衆革命に比べて、決着に時間がかかったのは、カダフィ政権側が激しく抵抗したからだ。反政府軍は東部のベンガジを起点に首都トリポリを目指して進軍。が、武器で優位に立つ政府軍に対抗できず、一時は壊滅の危機に立たされた。
窮地を救ったのが、米国や英国、フランス、イタリアなどの多国籍軍(その後NATO軍に指揮権を移譲)の介入だった。3月19日に多国籍軍が政権側の軍事施設を攻撃し、「オデッセイの夜明け作戦」を開始。カダフィ大佐をじかに知る塩尻宏・元駐リビア大使は、「NATO軍がカダフィ政権打倒に決定的な役割を果たした」と指摘する。
加えて、カタールやアラブ首長国連邦(UAE)といったアラブ諸国が、反政府側に武器や資金を提供するなど支援。逆に政権側は国際社会から経済制裁を受け、資金が枯渇。軍事力が細っていった。
関与強める英仏伊
今後はベンガジに本拠を置く国民評議会(ムスタファ・ジャリル議長)が新政府を樹立する。それを国際社会が承認することになる。再建に当たっては、歴史的に関係が深い「英国やフランス、(旧宗主国の)イタリアの関与が強まる」と塩尻氏は言う。
実は、リビアはカダフィ大佐独自の革命理論から発する直接民主主義(ジャマーヒリーヤ)を採用しており、元首も政府も議会もないという国際社会で類例のない国家だ。