アロスタシスは比較的歴史の浅い生理学の原理のことで、私が薬学生だったころに習った記憶はありません。しかし、アロスタシスの概念は神経科学の分野の進歩とともに発展し、近年ではこの言葉をよく聞くようになりました。
アロスタシスは日本語では「動的適応能」と訳され、外的な環境の変化を予測して、体が変化し環境に適応していく機能を指します。
環境の変化がどうであれ、体の状態を一定に保とうとするホメオスタシスに対し、変化する環境に適応するために必要に応じて自分自身を変えていくのがアロスタシスなのです。
例えば、定期的に運動を続けていると、心臓や肺の機能が強くなり、日常生活で階段を上がっても息が切れなくなりますよね。このように体を動かすことに耐性のある体がつくられていきますが、この際、運動により筋肉が強くなるだけでなく、内臓や神経系なども強くなっていきます。
これがアロスタシスの機能なのです。
ちなみに、運動をすることで得られる体の変化は、夏の暑さ対策にも役立ちます。というのも、血流が良くなると心拍数が上がり、汗をかきやすくなります。運動により、夏のような体内環境が作られるからです。
運動をする習慣がなく、汗をかけない体のままでは、熱が体にこもり熱中症になりやすくなります。運動することにより暑さに慣れ、適度に発汗することにより、熱を体外に放出できる体が作られます。
普段から運動をしている人は夏場でも元気に過ごせるのに対し、運動をしていない人は気候の変化に弱い傾向があるのは、このような理由によるものなのです。
最近、「暑熱順化」という言葉をよく聞きますが、これは夏の暑さに体が慣れて適応していく過程をいいます。この暑熱順化も暑さに対応するために体を変化させていくアロスタシスの一例といえます。
アロスタシスのための養生法
アロスタシスを導き出すには、正しい養生が大切になります。
昨今は気温や気圧の変化で体調を崩す人が増えていますが、アロスタシスがしっかり機能することで、多少の外的な変化に耐えうる、安定した体を保つことができるようになります。
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