プロから学ぶ「いいごまかし方」

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プロゴルファー/小林浩美

 プロは蒸し暑くても仕事なのでゴルフをするが、いくら仕事とはいえ後半のプレーともなると体力は消耗してくる。それまで調子がよかったのに、何かの拍子にボールが曲がりだしてしまうことがある。それでもうまくごまかしながらプレーをする。

たとえばプロが試合で、スイングの途中でクラブから手を離す場面を見たことがあると思う。あれは、そのまま振り切ってしまったらボールが曲がってしまうので、手を離すことでフォロースルーの軌道を修正し、ボールの曲がりを少なくしている。また、クラブが振り遅れてきた場合。そのまま打ったらボールが右へ行ってしまうので、インパクトで左足の踏ん張る時間をちょっと長くし、右ひじから先の腕を素早く内側に回転させ、クラブフェースの先でボールを捕まえてドローを打ったりする。
 このように、スイングの途中で異変を感じたら、とっさの判断で修正をしている。プロはこれを「いいごまかし方をした」と言う。

さらに、試合中ショットの調子が悪くなってきて、ボールが思うように飛ばなくなった場合、そのままではいいスコアは作れない。つまり方向も距離感も合わない日なので、ピンに寄るどころかグリーンにさえ乗らないことが多い。悪い調子のまま続けるなら、普段にも増してアプローチに神経を集中させ、パーパットを決め続けていかなければならない。かなり疲れるゴルフである。持っている技術の幅が少ないときは、どう修正していいかわからないから、気持ちを強く持って我慢するしかない。ところが、トップの選手になれば、プレーの途中でショットの修正を試みる。

自分のスイングの良い時のボールの飛び方は、プロならみんな知っている。ボールの飛ぶ高さや、ボールの曲がり方、ボールの飛び出す方向が自分の意図するところと一致すれば、調子がいいのだ。そうなるように、何が原因で悪いのか試合中修正を試みる。どこでやるのかといえばパー5のホール。比較的広くて、3打でグリーンに乗ればいいのだから、少々失敗したボールを打ったとしても挽回が利くのだ。あるいはパー3。グリーンの真ん中を狙って打てば、たとえ曲がったとしても大きな失敗にはつながりにくいし、なにせティーアップしているので、打つ状態が良い。

どのレベルのゴルファーにも当てはまり、最初にチェックすべきポイントは三つある。アドレス、ボールの位置、向いている方向の3点だ。プロなら自分のスイングを客観的に把握しているし、癖も知っている。自分の癖を知っていれば、おのずとチェックする項目は決まってくる。
 プロも調子のいい時ばかりではないから、いかに「いいごまかし方」ができるか、あるいは試合で修正できるかどうかが技術の幅の違いとなってくる。

プロゴルファー/小林浩美(こばやし・ひろみ)
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長。所属/日立グループ。
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