楽天は電子書籍で世界市場獲得を狙う、Eコマース連動も視野--鈴木尚・楽天取締役常務執行役員
価格とコンテンツを任せる代わりに、われわれはペーパーの販売とも連動しながら売り方を変えていく。つまり、電子書籍として魅力的な価格・コンテンツであれば、流通事業者として、積極的にプロモーションをして、ペーパーともども最大の売り上げを目指す。魅力のないものは売れない。出版社と協力しながら最大の効果を目指す考えだ。
確かに、音楽CD市場はダウンロード配信は増えたが、それ以上にパッケージメディアが減少した。電子書籍もそうなるのではという懸念の声も聞く。しかし、電子化は出版社にとってもメリットは大きい。在庫のロスはなくなり、倉庫・物流費用もなくなる。相当部分のコストダウンが図れる。
出版社によって異なるだろうが、おおむね価格のうちの3~4割は紙に固有のコストだろう。電子化してその分、価格を下げても出版社の利益は変わらない。コスト削減分を全部ではなくても、たとえば2割安くするだけでも、消費者には相当にインパクトがある。それに電子であれば小分けにして売るなど、ペーパーでは費用倒れするようなさまざまな売り方もできる。
1章単位で小説を売ったり、誤字脱字もある出来たてほやほやの原稿を電子で売って、読者の反応などをフィードバックした最終稿を改めて電子書籍やペーパーで売る、というスタイルもありうるだろう。販売の機会が広がるのだ。
そうしたメリットを出版社にも理解していただきながら、一緒に市場を立ち上げようと努めている。現在、講談社から多くの新刊タイトルを電子版として出してもらえる見通しだ。大手が参画して、成果を見せることができれば、電子書籍もビジネスになると、業界にインパクトを与えられるだろう。
状況次第では自社端末も投入
電子特有の大きな課題は、やはりデバイス(電子書籍端末)だ。コンテンツとデバイスの関係は、ニワトリとタマゴのようなものだ。デバイスが普及しないからコンテンツがそろわず、コンテンツがないからデバイスが普及しない。今までの電子書籍の歴史はこれの関係が悪循環に陥っていたといえる。