楽天は電子書籍で世界市場獲得を狙う、Eコマース連動も視野--鈴木尚・楽天取締役常務執行役員
悪循環は好循環にもなる。コンテンツが先か、デバイスが先かといえば、楽天ができることは、このデバイスの普及を後押しすることだ。ペーパーの本や雑誌はリビングにあったり、キッチン、寝室にあったり、あるいはトイレにあったり、どんなところでも手に取ることができる。電子書籍も同様に、デバイスが家のあちこちに置いてあって、いつでも好きなところで読めるようにならないと、電子書籍は生活に定着しない。そのためには、デバイスの価格の問題が非常に大きい。
アマゾンのキンドルは価格が200ドルを切ったあたりから急速に普及した。電子書籍を本格的に普及させるには、デバイスは100ドル、1万円を切る必要があるだろう。
個人的な考えだが、場合によってはゲームコンソールと同様に、デバイス価格を廉価にして、コンテンツ価格から回収していく、という方法もあるだろう。この場合、当初の持ち出し分を誰が負担するのか、ということになるが、黎明期には楽天が負担しないと進まないのではないか。
現時点で具体的な計画はないが、普及を加速するためには、アマゾンのように自社ブランドのデバイスを用意する必要が出てくるかもしれない。
デバイスについては、白黒のテキストベースでは差別化は難しい。各社とも同じようなコアテクノロジーを用いて、同じようなEMS(電子機器製造請負業者)で作るからだ。現在の白黒デバイス並みの駆動時間を持ち、タブレット端末並みの表現力があるカラー端末の実現を、各社とも模索している。
楽天もそうしたデバイスを目指している。今回、電子書籍事業でパナソニック、ソニーと提携したが、メーカーと連携することでデバイスの技術的な情報をより獲得できるようになった。お互いに協力し合って優れたデバイスを提供していきたい。