楽天は電子書籍で世界市場獲得を狙う、Eコマース連動も視野--鈴木尚・楽天取締役常務執行役員
8月10日、書籍配信サービス「Raboo(ラブー)」を開設し電子書籍事業に参入した楽天。29日にはパソコンでの電子書籍配信も開始した。
電子書籍は過去、失敗の歴史が繰り返された難攻の分野だ。さらに米国で先行するアマゾン・キンドルの日本進出も秒読みとされる中、どのように市場を切り開くのか。楽天の書籍流通ビジネスを統括する鈴木尚・取締役常務執行役員に聞いた。
電子書籍市場が拡大するためのポイントは2つ。1つはコンテンツの多さと、もう1つは新鮮さだ。
これまで電子書籍に提供されてきたコンテンツは、著作権が切れたパブリックドメインの古いものや、無料か限りなく無料に近いコンテンツが中心だった。米アマゾンが2007年からキンドルで作り上げてきた電子書籍市場も、点数こそペーパーを上回ったというが、内容ではまだパブリックドメインや無料本が多く、本当の市場形成という意味ではまだまだこれからだ。
日本でもペーパーと同様に新しい売れ筋のコンテンツをそろえることができるかが、本当に電子書籍が普及するカギを握っている。
大手出版社が本格参入、普及に弾み
アマゾンは今年の秋から年末にキンドルを日本市場に投入するといわれている。米国で作ってきた仕組みをほぼそのまま日本の出版社に提示し、かなり抵抗を受けているといわれている。アマゾンは米国での実績と、日本におけるペーパー流通の力を背景に、日本市場開拓に向け、出版社に揺さぶりをかけているのだろう。
アマゾンは独自の出版レーベルを立ち上げたり、直接著者を囲い込んだりと、出版社機能を取り込むような戦略をとっている。だが、われわれはアマゾンのように価格やコンテンツをコントロールする意思はない。これらはあくまで出版社が担当することだ。出版社の編集力・宣伝力がなくては、本は作れない。著者を囲い込んだだけで、優れた本が作れるわけではない。