メキシコ大統領選中に「93人も殺害された」なぜ カルテルの跋扈が政治にも影を落としている
後者はもともと前者の下請け的なギャングとして活動していたが独立して、今ではシナロアに対抗する勢力にまでなっている。CJNGは最も乱暴なカルテルというのが定評になっている。両方ともアメリカでの麻薬密売のトップであり、またラテンアメリカ諸国でも勢力を伸ばしている。
シナロアが1990年代から急成長したのは、特にフェリペ・カルデロン大統領の時代に庇護を受けていたからである。シナロアから同大統領に他のカルテルの動きの情報を提供して政府が警察や軍隊を派遣して彼らの活動を取り締まる。その代わりに、シナロアの活動には政府からの介入を控えるという暗黙の了解があったのだ。
カルテルは幅広い犯罪に手を染めている
カルテルは麻薬の密売以外に原油、天然ガス、鉱物資源などの密売、さらにアメリカに不法移民しようとしている人たちからひったくりなどといった犯罪も行っている。
また、資金力のある組織は、アメリカやメキシコの特殊部隊に所属していた戦闘員を高級で雇い、メキシコの軍隊や警察に武力的にも対抗できるだけの武装集団を組成している。
カルテルの手先になって路上で細かな犯罪を行っているのがギャング組織で、全国に200以上あると言われている。彼らの活動が活発な自治州はゲレロ、メキシコ自治区、プエブラ、オアハカなど8つ。こうした地域では犯罪組織の勢力争いが盛んで、組員同士の殺し合いが頻繁に起こっており、これに巻き込まれてしまう一般市民も少なくない。
選挙戦になると、候補者へのゆすりなどの頻度が増える。候補者が選出された暁には彼らから便宜を図ってもらって犯罪活動を容易にするためだ。それを受け入れない候補者に対しては、犯罪組織は殺害もいとわない。大統領選挙に加えて上下院や地方自治体の選挙も同時に実施されるので、ゆすりの対象になる候補者は余るほどいる。
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