「近所の仲良しのおじいちゃんは『ラーメンなんかに1000円も出せるか』と言っていて、最初は750円のラーメンを食べていきます。でも、それで美味しいと感じると、次は1000円のラーメンを食べてくれるんです。
美味しいものを出していれば、『1000円の壁』なんてないんじゃないかと思う時もあります」(桐谷さん)
営業日は火・金・日の3日間のみ。営業時間は11時から14時までと昼のみだ。それでも平日で10万円、日曜日は15万円の売り上げを稼いでいる。
通常の店から考えると倍近い売上額。お店でラーメンを出しているほか、持ち帰りや通販なども好調に売れているからだ。
あまりにお客さんが集まることもあり、営業日を絞って仕込みの日と営業の日を完全に分けることにした。営業日は徹底的にお客さんに向き合うためだ。
「最近だとチェーン店などではロボットや機械が調理するところも増えてきています。それがかなりのクオリティーであることも知っています。
その中で、職人がロボットに負けないためには、お客さんに向き合って笑顔で接客することだと思います。人間にしかできないことをしっかりやるということです。厨房もオープンにして客席全体が見えるところで全員と向き合うのが僕の仕事だと思っています」(桐谷さん)
ラーメン店の新たな生き残り方
桐谷さんはカップ麺の監修やカラオケ店のメニュープロデュースなど、新たなことにもチャレンジしている。店舗運営以外の活動で売り上げを作ることによって週3営業を保つことができるのだ。
「疲れた表情で営業したくないというのが一番でした。毎日営業するとなると仕込みの量もとんでもないことになるので、週3営業にできるのはとてもありがたいです。
計算したら週30時間も仕込みをやっていることになるのですが、仕込みだけの日を作れることによってしんどさやつらさがなくなりました。仕込みは僕にとっては小麦と遊んでいる時間なので、至福の時間です」(桐谷さん)
「桐麺」の人気から、今では加西市役所が市を挙げてラーメンを盛り上げている。ラーメンマップを作り、ラーメンを食べに来たお客さんに観光を促すなど新たな動きも出てきている。
「何より加西の人たちが食べに来てくれるのが嬉しいです。地元のおじいちゃんが朝の散歩の時に店に寄って名前を書いていき、昼に食べに来てくれます。みんな朝早くに来て記名してくれるから、いつも1巡目は地元の人ばかりです。これからは町に貢献していけるラーメン屋になれればと思っています」(桐谷さん)
名物「桐玉」は加西市のふるさと納税品に今年の秋から登録予定だという。
大阪のお店の存続やほかの事業がなければ、この形では営業できていなかったはず。そういった意味でも「桐麺」はラーメン店の新たな生き残り方を示してくれている。
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