大震災後の国づくりは道州制導入を軸に進めよ

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 しかし、政権交代で急速にトーンダウンする。現在、民主党のマニフェストでは道州制には触れていない(以前は「連邦的道州制の検討」を掲げていたことがある)。同党は基礎自治体を全国で300に統合することを優先する考えで、道州制には消極的とされる。

自民党政権時代にできた政府の道州制ビジョン懇話会も、政権交代後、事実上消滅した。一方、自民、公明、みんなの3党は10年夏の参院選で「道州制推進」を公約に示している。

そもそも、なぜ道州制の導入が必要なのか。中央大学の佐々木信夫教授はその目的として著書の中で、(1)分権国家に導く、(2)広域化時代への対応、(3)行財政を効率化し小さな政府を作る、の三つを挙げている。

戦後、敗戦国の日本が復興するためには中央集権体制による強い指導力が必要だった。しかし、その行き過ぎにより東京への極端な一極集中が起き、地方の疲弊は拡大。今回の震災でも中央集権・官僚主義の破綻が露呈している。

「第3の敗戦」(堺屋太一氏)から立ち上がるためには地方主権・分権化が不可欠である。

われわれの生活に定着した47都道府県は明治半ばに定められた。交通・通信手段の発達や地域経済の拡大で、県単位の行政運営は非効率となってきている。特に環境、観光、産業振興などは広域対応が必要だ。

GDPの2倍近くにも膨らんだ国の借金を減らすためには、行財政改革が必要である。それには肥大化した現在の行政システムを解体し、道州、さらに基礎自治体へと権限・予算を移譲してムダを省き、効率的な小さな政府にすることが望まれる。

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