映えスポットに変貌「横須賀」に何が起きたのか 建てない土地活用と前のめりな再開発事情
特別減税は2013年に施行された条例によるもので、一定要件を満たす建物更新などの事業において、事業用途の施設(建物)にかかわる固定資産税、および都市計画税を5年間、最大90%減税するというもの。2015年に竣工した再開発タワー「ザ・タワー横須賀中央」はこの制度を利用している。
また、奨励金は商業施設、ホテルに対して出されており、商業の場合は営業床面積10㎡あたり20万円、ホテルについては宿泊可能人数1人あたり30万円が支給される。2021年に開業したホテルニューポートヨコスカは特別減税、2種類の奨励金制度をフルに使っている。減税、奨励金の大盤振る舞いで開発を後押ししようというわけである。
高低差が大きく、平地の少ない横須賀市で効率的に、中心部に居住者を集うには、タワーマンションは1つの判断である。再開発を検討している地域の中には1959年築の三笠ビルなどもあり、建物の劣化を考えると更新も不思議ではない。
だが、人件費や資材費高騰の現在はタイミングとしては微妙なところ。すでに解体が始まっている駅前の若松町1丁目地区はまだしも、それ以外の検討エリアで開発が実際に行われることになるか、数字的に合わないのではないかという噂も聞こえてくる。
例えば、大滝町1丁目地区では2014年に再開発協議会が立ち上がっているのだが、この場所では以前に一度、民間の開発計画が中止になっている。
現在、中心部では一般のマンション建設も進んでおり、価格は3000万〜6000万円(40㎡強~73㎡)ほどと急激に高騰する都心部に比べると手頃な印象である。また、2015年に完成したタワーマンションでは高層階の2LDK70㎡超が7000万円弱で出てもいる。買う側からすると比較的買いやすいわけだが、そのエリアに新築で、建設費のかかるタワーを供給する側から考えるとどうだろう。
しかも、複数棟が建つと考えると過剰な供給になる可能性も高い。地元にそれだけの市場があれば問題はないが、横須賀市の市民1人当たりの平均所得は323万円で、神奈川県下19市のうちで15位(令和元年度)。当然、地元だけでなく、広い範囲から購入希望者を集める必要があるが、横須賀市にそれだけの吸引力があるかどうか。
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