「富士山を黒幕で隠す」日本のダメダメ観光対策 「オーバーツーリズム」に嘆く日本に欠けた視点
「観光は、旅行者にとっても受け入れ側にとってもつねにポジティブなものだった。だが、2010年代以降、観光が悪い意味合いを持つようになったのは歴史上初めてのことだ」とグラスゴー大学のギエム・コロン・モンテロ教授は最近のポッドキャストで述べている。
同教授はスペインのマヨルカ島を例にあげ、同島が人口100万人に対して、年間1600万人の観光客を抱える、おそらく地球上で最も 「観光化」された場所だと説明する。
マヨルカ島では、観光は地域経済にとって欠かせないものではあるが、グローバリゼーションというよりは植民地化と同義語になっている。観光客が爆発的に増えるにつれ、島の地元人口は減少していった。
マヨルカ島はドイツ人の間でも人気が高く、たとえばドイツの新聞では、天気予報の全国ニュースにマヨルカ島が挿入されることもある。「外国人観光客は拒否するが、難民は受け入れる!」モンテロ教授が気づいたマヨルカの落書きにはそう書かれていたという。
外国人観光客に全責任を押し付ける日本
オーバーツーリズムに対する日本の最近の反応は予想通りである。日本への観光客は2013年年間1030万人だったのが、コロナが明けた昨年は2500万人、今年は3300万人に迫るとみられている。これほど短期間に急増した国はなく、その結果、日本では通常の観光客が増える経緯を経ずにオーバーツーリズムが発生している状態にある。
残念なことに、国内当局とメディアは外国人観光客にすべての責任を押し付けるという最悪の反応を示している。岸田文雄首相は昨年、オーバーツーリズムとの闘いを、あたかも新型コロナウイルスや、エイズ(AIDS=後天性免疫不全症候群)のように国家的な大義名分として掲げた。
しかし、数字はこの論調を正当化するものではない。インバウンド観光客は日本ではまだ少数派だ。観光庁によれば、日本の旅行の72%は国内旅行客によるものである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら